1|統合か、ゼロか
Yo Nakagawa
世界有数の機関投資家からQMAPへ大型出資があったことは、3iQの高度なチーム設計や商品哲学の成果であり、今後の追加的な資金流入を呼び込むマイルストーンになるでしょう。ですがそれと同時に、暗号資産が新たな投資家層に受け入れられつつあることのサインでもあると思います。これは、暗号資産の民主化において、とても意義深いと思います。
Pascal St-Jean
私の技術分野での経験からすると、オープンソースやインターネットなど、破壊的なイノベーションは、完全に既存を引き剥がして“置き換える”というより、既存社会に溶け込んで“新しいものを作る”形で進むのが一般的です。私がその業界にいた初期のオープンソースの哲学は、「マイクロソフトを倒すぞ」みたいな無政府主義的な人も多くて、“世界に無料のコードを広めよう”という感じでした。ところが今ではオープンソースの話はあまり語られないけれど、どこにでもある。技術の「当たり前」になったのですね。それと同時に注目すべきなのは、世界は当初想像した形では変わらなかったということです。統合されて効率化した、という変化だった。私は暗号資産にも同じことが起こるのではと思っています。
つまり、私は暗号資産の技術は、伝統的金融へ統合され新しい価値を生むか、ゼロになるかのどちらかだと考えています。最終的にどちらかに収れんしていく。政府や制度、資本を変えるようなものに取り組むなら、最終的にそれをどう実装するかは彼らが決めます。まさに今それが起きています。技術は適応され、新しい金融サービス群を動かす—これは社会全体にとって、とてもポジティブです。私たちグループは「必ずそうなる」という仮説でポジションを取ってきており、今まさにその読み通りに時代が動いています。
2|法改正をチャンスに変える
Yo Nakagawa
特に規制が変わる産業では、その変化に備えてポジションを取ることが非常に重要です。もちろん、起きることも起きないこともあり得る。規制は我々が決めるものではありません。ただ、経験のある人間が揃っていれば、どちらに向かうかについて一定の予測はできる。日本は先行して暗号資産を規制し投資家保護を図ったが、いまや金融商品として取り込む方向へ進んでおり、世界的にも制度化が本流になっている。そういう意味で、私たちは比較的良い位置にいて、変化を確かな成果につなげるべく、着実に実行を進めています。
根本として、ブロックチェーンはテクノロジーです。そしてテクノロジーは、それが「有用」であって初めて価値が生まれるものです。
いま起きているのは、当初の思想とは少し異なる形で、ブロックチェーンが伝統的金融の技術レイヤーとして適応していく動きです。我々は、資産運用やリテール取引といった「資産面」での収益化において良いポジションを築いていますが、一方で、「技術面」においてもブロックチェーンが既存システムへ適応していくプロセスを支援し、共に成長できる立場にあります。そのどちらにおいても、この技術が何を意味し、どう活用されるべきかを深く理解していなければならず、私たちは常に研究を続けています。結果として「資産」「技術」の両面で貢献できることこそが、マネックスグループの真の強みです。

- 拡大
- (マネックスグループ株式会社 常務執行役員 中川 陽、3iQ Digital Holdings Inc. 社長兼CEO Pascal St-Jean )
3|マネックスグループのシナジーと未来
Pascal St-Jean
将来に起こりうる暗号資産業界のシナリオとしては、大きく3つあります。2つは確度が高く、今我々はそこに集中している。一つはコインチェックのユーザーのような「暗号資産ネイティブ層」へのサービス、もう一つは3iQなどが担う「伝統的金融の統合支援」です。最後が、周辺的な(フリンジ)市場であり、これは常に存在しますが、真の成長を牽引するのは最初の2つでしょう。
マネックスグループには資産運用、プライベートバンク、証券といった多様な機能があります。陽さんが説明した「統合」の世界が現実になると、いずれグループ各社も、今以上に暗号資産を自社のサービスに取り込んでいくでしょう。マネックス証券はすでに暗号資産デリバティブを一部扱っていますし、将来的に現物取引の領域で、コインチェックと協業する日が来るかもしれません。
マネックス・アセットマネジメントやプライベートバンクも、状況が開けてきたら暗号資産をどう統合するか、すでに話し合いを進めています。ただし規制の変化や市場の習熟が必要であり、長期戦になるでしょう。短期的には暗号資産企業同士、伝統的金融企業同士でそれぞれのシナジー創出に注力しますが、規制と市場の成熟が進んだ段階で、ネイティブ市場と伝統的金融市場を接続する商品・チャネルを設計していく。それが長期の戦略です。
Yo Nakagawa
株式と違って、暗号資産は性質上グローバルです。日本の投資家が米国株を取引することはできますが、米国の顧客が日本株を取引するのは同じくらい簡単か、というと違う。ですが暗号資産であれば、地理的な多様性を持つことで、地域をまたいだ事業シナジーを作りやすい。さらに、我々は暗号資産の資産運用ビジネスの発展スピードの違いも活かしてきました。日本は規制の影響で足踏みしていた一方、3iQはカナダで暗号資産運用の規制環境づくりに関与してきた。その知見を日本に持ち込むのは、他の資産クラスよりもずっと容易だと考えています。
暗号資産が制度の中に入るかどうかを問う時代は、終わりつつあります。これから問われるのは、その技術や資産をどう接続し、どう社会の中で機能させるかです。イノベーションが生まれ、翻訳され、統合される。その循環を回し続けることができるかどうか。私たちは、そのポジションに立っているのだと思います。
Pascal St-Jean
暗号資産の歴史は、20年前に思い描いた形そのものではないのかもしれない。でも技術は着実に統合され、新しいサービス群を生み出している。その過程に立ち会い、新たな接続を設計する。それがマネックスグループ、そして私たちの役割です。我々の物語は、ここからさらに広がっていきます。
2026年6月2日
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。

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