日本以外の売り上げは約3分の1、米国セグメントが31%、アジアセグメントが2%。日本の売り上げはマネックス証券株式会社(以下、「マネックス証券」)とコインチェック株式会社(以下、「コインチェック」)が半々。
クリプトビジネスについても海外の部分は増やしていきたいと思っている。一般的な証券ブローカービジネスでは日米以外も増やしたい。将来的には全体でおおむね半分を海外にしたい。
当社のビジネスは基本的に、個人のお客様のバランスシートを改善する事業(個人に限らず、投資家の皆様の運用をお助けする、あるいは経済活動をより便利にすることなどを含む)であると考えているので、ご質問の件は素晴らしいプロジェクトであるとは思うが、当社が取り組むことではないと認識している。
(回答者:松本議長)
コインチェックの口座開設の不便については申し訳ない。実際には口座数は順調に増えているので、他社よりも開けにくいということはないと思うが、機種依存などの原因は考えうるので確認、改善に努める。暗号資産の取引のコツについては、世界中のあらゆる金融資産のリスク・リターンの比率をグラフにすると、現金が一番リスクもリターンもなく、一番リスク(=ボラティリティ)もリターンも高いのが暗号資産。ハイリスク・ハイリターンのアセットをポートフォリオに入れるのは良いことなので取り入れるべきだが、ポートフォリオに占める比率は大きくしすぎないよう留意すべき。トレーディング目的の場合には、ボラティリティが高いので、レバレッジ取引は気を付けたほうが良いと思う。なお、コインチェックではレバレッジ取引は提供しておらず、マネックス証券のビットコインCFDがレバレッジ取引である。マネックス証券が主催するオンラインセミナー等で、当社の大槻などによる仮想通貨・暗号資産のトレーディングや運用のセミナーも行っているので、ぜひご利用ください。いずれにせよ金額を抑えるのが重要。
(回答者:松本議長)
DeFiは重要な分野だと考えており、そちらにも取り組んでいる。業績の説明の中で、日本セグメントで暗号資産の売却益が10億円ほどあったというのは海外におけるDeFiプロジェクトの仮想通貨への投資から得たもの。DeFiの動向についてはアンテナを張っている。コインチェックの中においても、和田副社長執行役員はDeFiに大変興味を持っており、様々な形でその動向を追いかけている。一方で、DeFiは規制当局側からするとマネーロンダリングなど不正なお金の流れが把握しにくいという問題もあり、DeFiではなく中央集権型のプラットフォームが望ましいという思いもある。必ずしも、すべてがDeFiになることはないと考えている。国として適法にビジネスができるものは中央集権型で進む可能性が十分に高く、DeFiばかりを追いかけるのも危険。当社グループ、コインチェックとしては、レギュレーションに適応した中央集権型のビジネスを進めるとともに、DeFi型のものにもアンテナを張り、成長のチャンスを探る。
(回答者:松本議長)
社外取締役の増加によって、野村やクレディスイスに起きた問題のようなリスクを防げるかは、後程、槇原社外取締役から回答してもらう。アルケゴスについては、有名なトレーダーのビル・ファンが運営するファミリーオフィスで、非常にパフォーマンスが優秀な中、各証券会社がプライムブローカー(株の売買執行や与信供与)として使ってほしいと営業をかけて、信用供与のリスクが大きくなった。アルケゴスは他人のことなので良くわからないが、成功が重なる中で、アルケゴスの組織が大きくなり、あるときリスクが偏ってしまった時期があるのだろう。そのときに中国の企業や米中問題などの問題で、大きくエクスポージャーを持っている会社の株価が動き、元本欠損が発生した。ゴールドマンサックスの損が無かったというのは、アルケゴスに口座を開けてもらえたのが遅かったために、ポジションが少なかっただけ。結論、全般にリスクを取りすぎている会社に与信をしすぎたという話で、金融機関ではおなじみのパターン。金融機関は通常、ビジネスの悪化ではつぶれなくて、リスクの取りすぎや偏りでダメージを受けるものである。当社グループでは、プライムブローカービジネスは行っていないので、こうしたリスクは存在しない。トレードステーションにおいては、若干小さな規模で行っているが、リスクは厳密に管理しているので問題ない。
(回答者:槇原取締役)
同様のリスクを防ぐことに直結はしないが、社外取締役がたくさんいることはポジティブに働くものであると考えている。個人的な意見としては2つある。1つ目は、社外取締役が少なければ社内意見が強くなり、社外取締役はただのアドバイザーになる。本当に監督・助言・サポートができるなら、過半数の社外取締役がいることが重要。また、存在するだけでなく、経験や判断力が重要。数が多いと、様々な知見がある取締役、例えば金融、テクノロジー、法律、BtoB、BtoC、経営者などがいるということであり、マネージメントへの助言、強制力によって会社のリスクを管理することが可能になる。これは保証ではなく、そうした方向に会社が向かう可能性を高くするというものである。どこまでリスクを避けるのか、リターンを追求するのかというのは難しい問題で、しっかりした経営者がいることが一番重要だが、そこに独立した意見をいえる取締役会があることは重要。ご質問に戻るが、社外取締役が多ければ大丈夫かというと、それはわからないが、当社グループのように社外取締役が3分の2でダイバーシティもあるボードは、最も良い形でのサポートはできるだろう。
(補足:松本議長)
招集通知の7ページに、取締役のスキルや経験のマトリックスが記入されているので参考にしてほしい。また、どれだけ社外取締役が優秀でも、経営サイドが耳を貸さなければ何の意味もない。経営者が社外取締役のいうことを聞く気がなかったということのほうが、問題であることが多い。当社ではエンゲージメントをテーマにした当社アクティビストファンドも運用している。経営者と社外取締役が前向きな関係かどうかも確認してもらうと良いだろう。
(回答者:蓮尾コインチェック株式会社代表取締役)
これからどのように差別化をして収益を伸ばしていくかという質問だが、取扱通貨については引き続き、増やしていく。また、先日発表したがIEOというプライマリーマーケットの商品も提供していく。さらにNFTに非常に力を入れており、商品のラインアップを確保することが重要だと思っているので、権利を持っている会社としっかりとタイアップして、ラインアップの充実を図る予定。アプリの使いにくさについては、もともとコインチェックはアプリが使いやすいと好評だったが、今一度、しっかりと見直して改善を図っている。諸々含めて、今後も使っていただけるサービスを作っていきたい。
(回答者:松本議長)
一国二制度はご指摘の通り、崩壊しており、香港は中国であると個人的にはとらえている。中国だと捉えたときに、巨大な数の個人投資家がいることになるので、香港を入り口にした中国ビジネスをどう考えるかという状況だと思っている。米中問題など様々な問題があるが、日本企業も米国企業も中国でビールや車を売っている。米中問題と中国の個人に向けたビジネスを展開するのは別の話とも思われる。中国の個人投資家に対するビジネスの展開をどうすべきかと議論をしている。一方で、米中をはじめとする緊張はあるので、あまり大きな投資をここから新しく行うことは株主の資本の使い方として未回収のリスクも考慮する必要があるため、リスクはしっかりと意識しながら中国戦略として香港を考えていく。BOOM証券を完全子会社化したのは2010年で、既に15年くらい香港で100%子会社を持っていることになり、そのメリットやチャンスもある。リスクとチャンスをそれぞれ見ながら考えていきたい。
(回答者:松本議長)
清明代表執行役や金野社外取締役にも後ほど答えてもらいたい。前提として、当社は従業員数の男女比が63:37。管理職(部長・マネージャー)では65:35なので、従業員比とほぼ同じ。役員比率では、やや男性が多くなり80:20程度。私および会社は、メリトクラシー(能力に応じた登用)をすべきだと考えており、そうした考えに基づいていれば、自然と男女比は適切な比率に導かれると思っている。
(回答者:清明代表執行役)
当社グループでは、性別に関わらず、多様性を重視した経営を行っている。当社の経営理念である「一歩先の未来の金融・人生のデザイン」の実現のためには、様々な視点からクリエイティブに考えて、新しい価値を作り出す必要がある。そのためには、性別や年齢を超えて能力のある人材・多様な視点を持つ人材を育てたいと思っている。自分自身、当社で12年半働いてきたが、あまり性別を意識したことはなく、目の前の仕事に取り組んできた。評価制度でも、年齢や性別は関係なく、あくまでも能力によって評価される仕組みになっている。あらゆる形での多様性を重視する経営をしていきたい。
(補足:松本議長)
年齢の多様性に関していえば、新任取締役候補の山田氏は31歳で、とても若い。
(回答者:金野取締役)
多様性の重要性については清明代表執行役の説明の通り。いわゆるポジティブアクション(女性活躍の推進を重視するあまり、評価に下駄をはかせるなど)を株主様は心配されているのだろうと考えている。当社については、完全な能力主義であると考えており、清明代表執行役についても、複数の候補者の中から能力で選ばれたものであり、ご懸念の点については心配不要だと感じている。
(回答者:石黒取締役)
椅子の取り合いという考えがあるということも承知している。一方、日本の30年先を考える政府の委員会にも所属していたが、1億2千万人の人口が8千万人になるという危機感の中で、少子化に伴う生産年齢人口・労働人口の減少が議論となった。つまり、むしろ椅子が余り始めており、能力を公平に評価するとともに、優秀な女性を労働市場に入れていくことが重要。
(回答者:松本議長)
11名は法定の最低人数を大きく上回っているので、任期中に取締役を離脱する人がいても数は足りており、今回は補欠の議案は出していない。昔、委員会設置会社ができる前の監査役会設置会社だった時代に、補欠監査役を指名してした時代はあった。
(回答者:松本議長)
金融の世界は、社会から斜めに見られながら始まるということが良くある。株式会社の始まりである東インド会社が出来たあと、世界中の国々は国民に対して、株式会社という怪しいものに投資しないようにと布告した事例もあった。デリバティブも同様で、40年前に出てきたときも最初は学者や様々な人が入って、先物悪玉論などがいわれた。今となっては、リスク管理をするために必須のツールになっている。どんなものでもイノベーティブな金融サービスは、最初は逆風が吹くものであると歴史が語っている。ICOはポテンシャルがあったが問題もあったため無くなった。その代わりにIEOになったが、SNSなどを見てもわかるように、個人が力を持っていく時代でもあり、そうした時代の資金調達方法として、IPOではなく、さらに広い裾野から資金を調達する方法というのは、十分に広がりうる。今のIEOは民間会社を対象としているが、国からの支援金に頼り切りの地方公共団体などもトークンオファリングでの資本調達がありうる。IEOは、今後も揉まれていくと思うが、大きな社会的意義を持ちうるものであり、可能性を前向きに追求したい。
(回答者:萬代執行役・マネックス証券副社長)
預り資産の増加については、新生銀行がお取り扱いいただいているお客様の資産をそのままマネックス証券に移管をして、マネックス証券との金融仲介として事業を行うことになっている。これによってマネックス証券は数千億円の預かり資産が増える予定。それだけで終わる予定はなくて、新生銀行がしっかりとしたバンキングの機能を持っているので、マネックス証券側に銀行機能を付加していくことで、銀行と証券が融合したようなサービスを提供して、さらにマネックス証券の利便性を高めていきたい。そうすることで、新しいお客様にご利用いただき、預り資産をさらに伸ばすことに繋がると思っている。
(回答者:松本議長)
貸株サービスは、20年以上前、当社が新しく発明した。当時、業界の反対もあり、金融庁ともずいぶん議論した。ご発言あったように、こういう場でもご要望等をいただいて改善を積み重ねてきた。ご指摘のように配当と優待が必ずしも連動していない。発行体によっては株主番号を振っているなど、個性が強い。対応が簡単ではないのが現在の状況である。おっしゃっていることはよく分かるので、難しいところもあるが、こういう株主総会の場でもご要望いただいたので、しっかり課題を切り出して、改善を続けていきたい。
(回答者:松本議長)
セキュリティトークンはご指摘の通り、マネックス証券で取り組んでいるので、清明代表執行役から説明する。
(回答者:清明代表執行役)
STO(セキュリティ・トークン・オファリング)については、マネックス証券でSTO協会の会員になって、私自身も理事を務めており、関心を持って研究している。法令制度の部分が、まだまだ整っておらず、どのようにしてSTOをビジネスとして展開しうるかは業界で検討しているものとなる。マネックス証券としては、その状況を踏まえながら検討していく。
(補足:松本議長)
ブロックチェーンを使った債券の発行について、今から2年前、世界銀行がオーストラリアで発行した。管理はブロックチェーン。その数か月後に、当社グループもブロックチェーン債を発行しており、マネックスファイナンス株式会社が発行して、BOOM証券が引き受けて、マネックス証券が購入するということを行った。野村証券か野村総研が似たようなことを最近発表しているが、当社グループは発表していないが、それよりも遥かに早く、発行から償還までをブロックチェーン上で実証済みである。クリプトで頑張ることが当社の時価総額の向上のために重要という指摘の通りなので、取り組んでいきたい。
(回答者:松本議長)
本総会はインターネットと当会議室でハイブリッドでやっている。Sharelyは議決権の行使なども含めてプラットフォーム上で出来るというもの。2週間ほど前に法律の改正もあり、定款を変えればオンラインオンリーで出来るようになる。Sharelyの世界観には追い風が吹いている。Sharelyがサービス提供するようなバーチャル株主総会は、かなり広がっていくと思っている。一方で、東芝の株主総会のような総会がオンラインで行われると、株主は満足しないと思われる。物理的な場所で議論をしたいというニーズはあると思うので、完全にバーチャルだけになることはないと思う。オンライン、ハイブリッドの両方が残っていくだろう。当社では、かつては約800名が参加していたこともあり、社外取締役も発言するという、ダイナミックな株主総会を実現してきている。そうしたことも考えて、今回はSharelyを使っていないが、今後はSharelyを使った形での総会運営は当然前向きに考えている。ダイナミックな質疑応答やディスカッション、社外取締役の発言などもある株主総会を行いたいので、そうしたことを実現しつつ、Sharelyを使うような方法を考えていきたい。