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- 「ART IN THE OFFICE 2017」作品が展示されているプレスルーム外観
本年度は88作品案の中から、鉛筆による描写力の高さや意外性に加え、プレスルーム(会議室)というオフィス空間を利用することにより、そこで働く人々とアートとの関係性について考慮している点が評価され、橋本晶子さんの作品「There is something I want to talk about.」が選出されました。
見えるものの不確かさ、そして空間と絵画について考えています。無意識に見えているような、取るに足りないバラバラのイメージを、展示空間に再構成して新たな風景を生み出す作品などを制作してきました。
目に入ってくる光景には、むしろよく見えていない部分があり、多くは不確かなイメージのままで捉えられ過ぎていくようです。描くことと、それを配置することで、イメージと現実の有りようを探っています。
今回は、会議室に人が集い、円形の空間であることを意識して取り組みます。この場で起こる会議と、壁に展開される絵が互いに呼応して、1つの風景が生まれるよう試みました。

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- 作品:橋本晶子/「There is something I want to talk about.」/2017年/墨、アクリル、鉛筆、紙/サイズ可変
- 画像の無断転載・複製を禁じます。
ビルの高層階に位置するこのオフィスには、エレベーターを軸足にして宙空に浮いている感覚が常にありました。新設された壁面やガラス、床、人の動きを形作る廊下、セキュリティーのゲート、街の流れ、ここにある日常の景色を眺めることは、それ自体なにか大きなイメージの中にいるような体験でもありました。
ワークショップでは社員の方々に、この見慣れた風景(駅からオフィス入り口までの道のり)の画像を印刷した紙を渡し、自由に切ってバラバラにしたのち再構成して別の紙にコラージュしてもらいました。風景の中で意識の中心にあってよく見えている部分も、印象の外でよく見えていなかった部分も、等価にバラバラの画像になった時、生きていて目に映るものの全てがイメージとしてあり得るのだとあらためて感じました。
今回の作品では、座る椅子の場所、円卓を挟んだ立ち位置、動きによってそれぞれに異なる眺めがあります。実際の会議の時だけでなく、この場を通り過ぎる時にも、目の端に映る風景であってほしいです。密閉されたオフィス空間で、そこになにかささやかな引っかかりが生まれていることを期待しています。
橋本晶子
1988年生まれ。2015年武蔵野美術大学大学院修士課程修了。在学中から主に紙と鉛筆での絵画、インスタレーションを表現手段とする。これまでの個展に「call if you notice.‐気づいたら電話して‐」gallery blanka/愛知(2016)、グループ展に「a.a.t.m.アートアワードトーキョー丸の内2015」丸ビル/東京(2015)、「東京サンパウロ‐表現の両極‐」アフロブラジル美術館/ブラジル(2014)、受賞歴に「シェル美術賞2014」木ノ下智恵子審査員賞、などがある。

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- 参考作品:「view」/2016年/墨、アクリル、鉛筆、紙
- 「view」は、「ART IN THE OFFICE 2017」の受賞作品ではなく、橋本氏の既存作品を今回の作品案の参考として掲載するものです。
- 無断転載・複製を禁じます。
村上太一氏(株式会社リブセンス代表取締役社長)
アートには興味があり美術館やギャラリーにもよく足を運びますが、審査は初めてでした。応募作品1つ1つに作家自身の経験や歴史、哲学、社会の見方などが反映されており様々な人生が垣間見えたほか、審査員のみなさんが作品をみる際の視点を知ることができ勉強になりました。受賞した作品は画力の高さを感じるほか、タイトルの付け方や空間の特性を活かした新たな提案などに観る人がどう感じるかを熟考している様子が伝わってきました。今後の可能性の広がりにも期待しています。今回の受賞をきっかけに、何かを壊し、また大きな境地を創造していける作家になって欲しいです。

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- 撮影:越間有紀子
塩見有子氏(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]理事長)
受賞者の鉛筆による描写力やモチーフの切り取り方、展示の方法がすぐに目に留まりましたが、さらに、これまでやったことのない新たな表現や展示に挑戦しようとしていると感じました。また、プレスルームの空間を想像して、部屋で会議をする人にとっての作品の見え方や捉え方を提案に含めている点も評価しました。
全体としては美大出身の方からの応募が増えているように感じました。一方でレベルが上がったかと言えば、そうとも限らず、どこか似た印象を持ってしまいました。それでも審査員の方ともじっくり議論をし、最終まで残った数点はどれをとっても面白いもので、作品を見てみたいと思わせるものばかりでした。
久保田真帆氏(MAHO KUBOTA GALLERY ディレクター)
全体として「私」の個人的な物語からの飛躍がない作品が7〜8割を占めていたことは残念です。俯瞰して社会とアートの関係性や新しいアートの提案がある作品に出会えると、新鮮な驚きがあり楽しいです。一方でオフィスという空間に展示されるので、そこで働く方がアートと一緒にどう日常を過ごすかということを重視して選びました。
受賞作は、一見ペインティングかと思ったのですがメディアが鉛筆であること、そしてコンポジションの解き方が面白い。湿度感が取れた時にすごく飛躍が見えるんじゃないかと思います。完成された技術力はあるけれども、今後変化していく様子を観たいです。

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- Photo:Kenichi Aikawa
難波祐子氏(現代美術キュレーション)
初めて審査に参加させて頂き、非常に密な時間を過ごすことができました。今回は力のある作品もありましたが、「なんだこれは!」というほどのものがなく、みんなある意味保守的で、綺麗にまとまってしまっていたのがやや残念でした。
審査のポイントとして、プレスルームの曲面の空間をきちんと活かし、かつ、中で働く人にとっては、一年近く毎日のように目にするものなので、驚きを与えつつ、オフィスの空間にもマッチするという両方を兼ね備えているものを考慮しました。この空間の持つさまざまな意味を考えながら制作することで、新たな可能性を見つけてくれたら嬉しいです。
松本大(マネックス証券取締役会長)
今年で10回目をむかえる「ART IN THE OFFICE」。今回も様々なドラマあり不安定さもあり、ダイナミズムが感じられる審査会で楽しかったです。今年は「作品と見る人・座る人との関係性を考えている」ことが感じられる作品案が受賞したのではないかと思います。私はコンテンポラリーアートとは、作品と生きている人とのコミュニケーションであるように考えています。それが全体で感じられる作品案でした。新しいオフィスで展開される10回目の「ART IN THE OFFICE」。どのような展開が生まれるのか。期待しています。
