「IEO(Initial Exchange Offering)」は、暗号資産を活用した新たな資金調達の仕組みです。日本国内の法規制に則って暗号資産取引所が主体となって審査を行い、新規暗号資産が販売され、取引所や販売所への上場が行われます。

 

コインチェックは、IEOを「新しい価値交換を、もっと身近に」というビジョンを体現する取り組みとして位置づけ、国内最多となる4件のIEOを通じて、独自のノウハウを培ってきました。

 

しかし、これまでの実績を支えているのは、決して派手な手法によるものではありません。信頼性を確保するための発行体への厳格な審査と投資家保護への徹底したスタンス、各ステークホルダーとの丁寧な合意形成を一つひとつ積み上げる過程こそが、IEOの実現には不可欠です。こうした地道で徹底した実務への姿勢が、現在の信頼を形成しています。

 

暗号資産の市場拡大を一過性のブームで終わらせず、誰もが安心して使える社会のインフラへと育てていく、そのために何を考え、どのような戦略を描いてきたのかについて、コインチェック株式会社事業開発部長 田畑 佑太に話を聞きました。

 

 

 

(IEOの仕組み)

IEOの仕組み

「誠実さ」を審査プロセスに実装し、IEOへと向き合う

IEOは、暗号資産交換業者にとっても、そして新しい価値交換に取り組む挑戦者にとっても、極めて重要な取り組みです。しかし、その本来の目的は、単にトークンを新たに販売することではありません。販売後もトークン経済圏が拡大し、それによってトークン自体の魅力が持続的に高まっていくことです。

 

私たちコインチェックは、2021年7月に国内初のIEOを実現させて以来、暗号資産業界のリーダーとして4つのプロジェクトで発行体と伴走してきました。その中で私たちが提供してきたのは、発行体が掲げる計画が本当に実行可能なのか、またその計画を支えるガバナンスが実効性をもって構築されているのかを、長期にわたって厳格に検証し続ける審査プロセスです。 

 

実態の把握が難しい、新しい価値を扱うからこそ、その審査は形式的なものであってはなりません。投資家の皆様の不安を解消し、信頼に足るプロジェクトだけを市場に届ける、この責任を果たすために、私たちは長期にわたって、数多くの審査項目をつぶさに検証していきます。

コインチェック 田畑

コインチェック株式会社事業開発部長 田畑 佑太

事業計画を磨き上げる審査と伴走で発行体と向き合う

IEOの実現には、これまでの実績においては、1年半以上の歳月を要してきました。それは発行体と私たちが、審査する側と審査される側という立場を超え、一つのチームのように深く議論し、事業計画を磨き上げる一切の妥協を許さない真摯な伴走の道のりです。

 
「なぜ、ブロックチェーンが必要なのか」「なぜ、トークンを発行するのか」、資金調達に多くの選択肢がある中、あえてIEOを選ぶ必然性を問い直し、発行体の想いを市場や投資家に説明可能な、論理的な計画へと具現化するのが我々のミッションです。また、事業計画を支えるコーポレートガバナンスの構築については、内部監査体制の設置から組織運営の透明性に至るまで、発行体と徹底的に向き合います。これらの点を私たちが厳しく指摘するのは、全て投資家保護に直結する要素の一つだからです。


この審査過程で、発行体が難色を示したり、頭を抱えるような厳しい局面に何度もぶつかりますが、客観的な事実に基づいて課題を指摘するなど厳格に審査し、最適解を見出すために膝を突き合わせて議論を重ねます。私たちは、リスクを事前に把握し、そのリスクを極小化するために誠実に対応することこそが、結果としてプロジェクトの価値を高め、新しい価値交換を「身近なもの」にするために必要なプロセスであると確信しています。

 

上場後も見据えた、投資家保護と市場の健全性への取り組み

当社が業界のリーダーとして実績を積み上げる一方で、市場の課題についても冷静に分析を続けています。その最たるものが、上場後のボラティリティ(価格変動)の高さです。 調達時には大きな需要が集まり、注目度の高さから価格が過熱することもありますが、上場後には必ずしも安定した価格形成が続くとは限らないのが実態です。「現在の構造は、本当に投資家を守るものになっているのか」、こうした問いを起点に、私たちは上場後も含めて投資家が安心して参加できる市場を実現するために、IEO実施後の価格形成に資する構造的な見直しを検討する必要があると考えています。 


短期的には一定の制約を伴うとしても、中長期的にはプロジェクトの信頼構築には不可欠な条件となると考えています。過去の4件の実績から得た知見を、審査基準の厳格化や明確化へと着実に反映させていく、こうした継続的な改善の循環を回し続けることこそが、私たちコインチェックの競争力の源泉であり、リーディング・カンパニーとして業界をけん引する責任だと考えています。

 

属人性に頼らない、再現性ある審査体制の構築

これまでのIEOの実績を通じて、社内には多くの経験やノウハウが蓄積されてきました。しかし、その知見が一部のメンバーに偏ってしまうことは、プラットフォームとして成長を続けていく上での課題となります。そこで現在、審査プロセスを分かりやすく「見える化」し、担当者の属人性に依存せず、常に高い品質を保てる仕組みづくりを進めています。

 

具体的には、事前審査における詳細な判断基準を網羅した観点表の作成や、検討項目の深さをそろえる議論の粒度の平準化などに取り組んでいます。こういった、暗黙知を形式知に変換することでどのプロジェクトに対しても、組織的に等しく厳しい基準で向き合える体制を整えています。過度な属人化を排し、審査のプロセスに客観的な透明性を持たせることが、組織としての再現性を高め、さらなる実績を積み上げていくための基盤となります。 

 

この仕組み化は、社内のみならず、IEOを目指す発行体にとっても大きなメリットとなります。「何を目指し、何をクリアにすべきか」というハードルが明確になることで、コミュニケーションが円滑になるからです。専門家だけの閉じた領域とせず、多様なメンバーが等しく議論に参加できるオープンな審査体制を築く、そのプロセスの透明性こそが、投資家の皆様に対する「誠実さ」の証左になると考えています。
 

コインチェック 田畑

新しい価値を、もっと身近なものへ

IEOという仕事を通じて、多くの方々の挑戦を支え、資金調達の選択肢を広げる支援は大きなやりがいがあります。IEOにより新規発行されるトークンは、その後のNFT取引などを含めた経済活動を支える手段となり、これまで価値として認められなかったものに光を当てる可能性を持っています。

 

「新しい価値交換をもっと身近に」を実現するために、私たちは日々真摯にIEOに取り組んでいます。安心・安全なクリプト経済件の裾野を拡げること、このために私たちはこれからも誠実に発行体や他のステークホルダーと向き合い続けていきます。

 


2026年2月10日
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。