マネックスグループは、企業理念をかなえるため、中長期のビジョンを掲げ、理念およびビジョンを共有できる会社をM&Aすることで業容を拡大してきました。出身や役職、国籍を問わず自由闊達に発言できる創業来の企業風土が、異なる企業文化を許容し、様々な考えをもつ社員が活躍できる場を作ってきたと考えています。
若いうちから裁量権のある業務を任せ、性別・国籍を問わず能力重視で人材を登用してきた結果、女性や外国人の社員数、女性管理職、20代の管理職が誕生しています。アウトプットベースであるからこそ、男女ともに安心して育児休暇を取得することができ、当社の男性の育児休暇取得率は77%です。
現代のように技術進化のスピードが速く、国境を超えて新しいサービスや製品が入ってくる時代に、同質なバックグランドや考えをもつ人材だけで組織を創ることはリスクです。様々な考えや発想をもつ人材が、自由闊達に発言できる企業風土を作ることこそが、新しい波を作り、困難な波が来ても乗り越えられる力を持つ組織になると考えています。
マテリアリティ・マトリックスの定期的な見直しのため、2023年夏に実施した(当社のステークホルダーである株主・顧客・従業員における影響度を測る)社員アンケートでは、86%がDEIは当社にとって必要不可欠な要素であると考えており、また、88%がDEIはイノベーションに必要不可欠な要素だと思っています。
DEIの理解促進には、経営陣がコミットしており、春に日本に拠点のある事業者を対象に開催した研修会では、400名近くが参加し、「均質ではない組織」であることの重要性を説いています。
グループ全体の取組みとして、2021年に日本、米国、アジア・パシフィック、クリプトアセット事業の4つのセグメントの人事担当者、DEI推進担当者からなるDEIグローバルステアリンググループを発足しました。各社の人材の能力を十分発揮させるため、年に2回開催するグループにおける報告会で各社に様々な課題への取り組みをグループ内で共有することで、ノウハウを蓄積し、各社のDEI推進の一助とすることを目的としています。
日本セグメントにおいては、国籍、年代、経験に多様性のある人材が集う組織であることがとても重要だと捉えています。国籍におけるダイバーシティは、日本を含むアジア圏、北米、欧州などの広範囲に及ぶさまざまな国籍を持つ従業員が活躍しています。また、社員の個性を最大限発揮できる組織風土を醸成するため、社内のインターナルコミュニケーション活動においても、ファミリーデーやバーベキューを開催し、家族に対してマネックスをもっと知ってもらうことで従業員の仕事に対するモチベーションの向上を図っています。
クリプトアセット事業セグメントにおいては、国籍、性別、年齢、学歴、経験に多様性のある人材が集う組織になっており、さまざまなバックグラウンドを持った方が活躍しています。日本事業拠点を対象としたDEIの職位者研修に加え、各組織の本部長を担っている執行役員の個人評価にはDEI項目を設定しております。日常業務・レポートライン内でより実効性がある構造を取っています。 前期末の本部長コメントを一部抜粋してご紹介します。「多様性の面において、女性職位者を含む女性メンバー、介護/定期通院を要するメンバー、外国人メンバーがいる本部であり、本人たちが働きやすいように出勤ルールを整備し、また会議の一部を英語化しました。」 「自組織内には、年齢・性別・国籍等に関し、様々な属性を持つ方がいらっしゃいますが、評価プロセスの中で、それらに着目することをせず、会社で求められる行動・成果の基準に沿って、公正な評価ができました。」 上記のとおり、毎期社内上位者からDEIへの意識向上と具体的な取り組みを進め、引き続き全社でDEIを推進して行きたいと考えています。
米国セグメントのトレードステーションでは、包摂性を推進するための様々なプログラムを展開しています。NDC(National Diversity Council)とマーケティングの協力を得て、DEI推進の研修プログラムを開発し、メンターシッププログラムを通じて知識の共有とキャリア形成をサポートしています。また、社員による草の根活動を会社として支援し、トレードステーションのDEIカウンシルの参加メンバーに対して、NDCパートナーシップからの支援が得られるよう調整し、取り組みを強化している他、DEIイニシアティブは継続的に取締役会に報告する事項となっています。リモート勤務や離れた拠点に勤務する社員同士の繋がりを深めるため、ERG(Employee Resource Group)を会社として支援し、帰属意識と戦略的思考を育むことを目的としたチェスERGや、フィンテック業界の女性をエンパワーすることを目的としたフィンテックERGなどが立ち上がっています。地域貢献活動である「TradeStation Cares」への参加を促すことも一体感や企業としての責任を醸成する上で重要だと考えています。
2021年度以降、日本拠点の全従業員を対象にしたDEI研修を定期的に実施しており、多くの従業員がDEIの概念や自分たちが普段どのような意識を持ち、行動すればよいかを学べる講義を行っています。
従業員とその家族が当社オフィスに集まり、従業員の家族に仕事を理解してもらうイベントを開催しました。
また、DEIへの理解を深める独自の取組みとして、現代アート分野で活動する新進アーティストを対象に、マネックスグループ本社オフィスプレスルーム壁面に制作する平面作品案を一般公募し、受賞者の作品を約一年間、プレスルームに展示するプログラム「ART IN THE OFFICE 」を実施しています。受賞アーティストは一定期間、当社オフィスに滞在し、社員へのワークショップや日常的な交流を経て、作品を制作します。作品完成までのアーティストの試行錯誤の過程に社員が日常的に触れ、またアーティストが捉える世界と多様な表現を知ることで、様々な価値観や考え方を認め合うことの大切さを理解することにつながっています。
米国セグメントのトレードステーションでは、雇用機会の平等を方針とした人事制度設計をしています。例えば、採用/異動/昇進/退職/研修において、人種/宗教/性別/出身/年齢/妊娠/ハンディキャップ/兵役経験/配偶者の有無などの考慮を一切せずに人事機会を提供することを徹底しています。またDEIの促進を通して、従業員が顧客に対してより良い商品・サービスの提供ができる社内環境の構築を目指し、すべての従業員の心理的安全性を向上させる一方、リモートワークを行う従業員についても所属意識や組織貢献感を高めるための研修やメンターシッププログラムを実施しています。加えて、DEI関連の好事例を共有し合い、情報交換を行うイベント(LGBTQ+、Woman in Fintech)への参加や、黒人の就労支援を行うNPO団体である、Black Professionals Networkでの求人票の掲載など、現地のコミュニティと積極的に取組みを進めています。
ART IN THE OFFICE 2023 受賞作品「Liminal space」Liisa
年度 |
研修名 |
内容 |
参加者 |
---|
2021 |
DEI社内研修KickOff
クライアントサービスとDEI
採用、協働の場面から考えるDEI |
DEIの定義、当社の取組み
他社事例、TheValuable500、ウェブアクセシビリティ
なぜ今DEIなのか、Equityの課題を踏まえた当事者との向き合い方 |
207
82
159 |
2023 |
CEO主催 行動指針およびDEIの研修
社員総会
OTDワークショップ |
DEIの意義について
経営方針および企業理念の理解促進
日本事業拠点の役員以上を対象としたDEIの理解促進 |
380
360
50 |
※対象者:
2021年 マネックスグループおよびマネックス証券
2023年 日本事業拠点8社向け
マネックスグループおよびグループ会社の人事制度においては、性別、年齢、国籍などによらず、企業価値への貢献度を唯一の評価基準として人事評価をおこなっており、その結果にのみ基づいて人事処遇するため、多様性を損ねない組織体制を構築しています。
賃金格差(ペイギャップ)については、男女別の報酬体系を持たないため、個々人の貢献度に対する評価結果や職種の違いに伴う格差は生じますが、性差による格差は生じません。なお、多様性がどの程度の品質で確保されているかを測る指標として、評価と報酬の観点から「女性管理職比率」と「男女賃金格差」を計測しています。(2023年3月期の実績は下表のとおり)
男女別の給与体系を持たないため、原則男女間格差は生じませんが、下表は報酬に関する職種間格差から生じたものです。
項目 |
区別 |
男性 |
女性 |
---|
ペイギャップ |
全社員
非管理職
管理職者 |
100%
100%
100% |
86%
81%
102% |
※対象会社:マネックスグループ、コインチェック、トレードステーショングループ各社
マネックスグループは、「多様性は創造力の源泉である」と考えています。障がい者の活躍推進に取り組む世界的なムーブメント「The Valuable 500」は、当社グループの理念およびESG/サステナビリティに関する考えと共通しており、国連が提唱する「持続可能な開発目標(SDGs)」の地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」という考えにも沿う活動であると判断し、2021年より参加しております。
また、障がい者のインクルージョンについて、下記の項目を中心に取り組んでおり、その進捗をマネックスグループ取締役会にて報告、協議しております。
- 障がいのあるお客様への配慮
・金融サービスへのアクセス向上:障がいのあるお客様へのアクセス向上が可能な技術革新への研究投資
・金融リテラシーの向上:障がいのあるお客様が投資教育を受けられるための技術革新への研究投資 - 障がいのある方の雇用の推進と職場環境改善
・障がいのある方が、その障がい特性に添った形で活躍できるよう、業務内容や勤務体系への 工夫の更なる改善
・在宅勤務、リモート勤務の更なる活用 - 障がいのある方のバリアを取り除く、あるいは障がいのある方へのビジネス機会を増やすための資金活用などの間接的な活動
・障がいのある方へのサポートを行っている団体(NPO・企業)への資金提供(寄付、投資) - 社内外への活動
・上記活動に関する社外への発信
・社内におけるeラーニングなどでの障がいのある方に対するインクルージョンを含む、「ダイバーシティ、エクイ ティ&インクルージョン」研修の継続
日本の事業拠点(マネックスグループ、マネックス証券、マネックス・アセットマネジメント、コインチェック、ヴィリングなど)を対象として、多様な働き方を尊重する中でも、日々の社員同士の繋がりを大切にし、そして日頃のちょっとした感謝を伝えるために「プチサンキュー投票箱」という制度があります。気軽にサンキューが送れ、サンキューを多く受け取った方にはプチギフトが贈られる仕組みです。
さらには業務改善や効率化、新しい取組みへのチャレンジなど、見えないところで優れた貢献をした社員を称える独自の表彰制度として半期ごとに発表される「BOOST」があります。革新的なアイデアやサービス開発を称える「IDEI AWARD」は、アワードの中でも最も栄誉あるものとして、毎年1回審査され1名・1組の受賞者が決定しています。
コインチェックやトレードステーションでも、それぞれ独自の表彰制度があり、イノベーションや企業風土への貢献などが見える形で称えられています。
マネックスグループおよびマネックス証券の正社員・契約社員を対象に定期的にwebによる「ストレスチェック」を実施し、自らのストレスの状況について気付きを促すとともに、検査結果を集団的に分析し、職場環境の改善のための措置を実施し、医師と適切に連携を取りながら、メンタルヘルス不調の予防に努めています。
米国セグメントのトレードステーションでは、ウェルネスを目的としてストレスと向き合うウェビナーを提供しています。
日本セグメントにおいては、労働安全衛生法に基づき、人事部長、衛生管理者、産業医、一般社員で構成される衛生委員会を毎月一回開催しています。衛生委員会では、時間外労働時間の状況把握、職場環境や健康に関する問題について話し合い、派遣社員を含むグループ内で働くすべての社員が心身ともに健康に働けるよう配慮しています。
当社は、社員と対話を通して向き合う機会を持つことにより、すべての社員が企業理念に共感し、組織や仕事に対して自発的な貢献意欲を持ち、自走して組織改善に参画する風土を醸成することを目指します。また、人的資本を定量化する試みとして、「人間関係」、「自己成長の機会」、「理念への共感」等の深度を計測し、組織の強みと弱みを見える化する目的で定期的に組織エンゲージメントサーベイを実施しています。
マネックスグループおよびマネックス証券では、年に2回~3回、エンゲージメントサーベイが実施されています。毎回実施後に、全体のサマリー結果を全社員に共有しています。2023年は、総合スコアが67となり、このうち社員個人の「やりがい」や「達成感」等の成長実感、「挑戦する風土」や「成果承認」等の組織体制に係るスコアにはベンチマークとする企業のスコアと比較して、改善の余地が見られました。サーベイ結果のレビューを通じて、経営陣が課題を認識し、さらにやりがいのある職場環境の構築に向けてコミュニケーションを図っています。
トレードステーションでは、一年に一度、「職場、部署、上司をどの程度推薦するか」というシンプルな質問を投げかけて、会社と社員の関係性の変化を確認しています。さらに、結果は全役員、社員に毎回共有しています。
今後は社員の挑戦と成長を支援する育成体制・就業環境の改善を図り、「100年企業」を目指した組織づくりに取り組むことが重要と考えています。
2024年3月末グループ(※)人員情報
グループ女性従業員比率 グループ女性管理職比率 |
24% 22% |
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契約社員割合 |
2% |
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労働基準違反件数 |
0件 |
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※対象会社:障がい者は、マネックスグループおよびコインチェックのみ、他はトレードステーションも含む(以上によりグループ従業員の9割超をカバー)