マネックスグループは、2018年のコインチェックのグループ入り以来 、暗号資産を、グループの成長を牽引する主要な柱の一つと位置づけ、その可能性を追求してきました。そして今、暗号資産市場は、これまでの「個人投資家主導」の市場から、機関投資家の本格参入による「金融商品としての定着」という、新たなフェーズへと移行しようとしています 。この変化を確実に捉え、新たな資産運用ビジネスを確立するための鍵として、私たちがパートナーに選んだのが、暗号資産運用のグローバルな先駆者である3iQです 。なぜ今、機関投資家へのアプローチが不可欠なのか。そして、世界有数の政府系(ソブリン[※1])ファンドによる大型出資 は、私たちの未来に何をもたらすのか。マネックスグループ執行役の中川陽と、3iQ 社長兼CEOのPascal St-Jeanが、両社の出会いから「伝統的金融とクリプトの融合」というビジョン までを語り尽くしました。

 

ソブリン・ファンド[※1]
国家が保有する資産を運用する政府系投資ファンド 。世界最大級の運用規模と厳格な投資基準を持つことで知られ、QMAP[※2]への大型出資は、暗号資産が新たな投資家層に受け入れられた象徴的なマイルストーンとして注目されています。

 

QMAP[※2]とは
3iQが提供する、機関投資家に特化した暗号資産運用プラットフォーム 。複数の運用戦略を組み合わせる「ファンド・オブ・ファンズ」形式とは異なり、独立したプラットフォームとして構築されているため、高い透明性と運用の柔軟性を実現しています。

1|コインチェック買収から始まる次の問い

 

 

Yo Nakagawa
マネックスグループの暗号資産への取り組みは、2018年4月のコインチェックの買収から始まりました。コインチェックがグループ入りした後、私たちは「暗号資産が資産として確立されるのであれば、いずれ伝統的金融と同じ道を辿るはずだ」と考えるようになりました。つまり、暗号資産に厳格な規制が導入されることで機関投資家の資金が流れ込み、過去の金融資産の歴史が示す通り、その関心は取引から資産運用へと向かうという仮説を私たちは立てていました 。その結果、私たちは取引所を運営するコインチェックを買収した後、比較的早い段階から暗号資産の資産運用事業に強い関心がありました。その過程で出会ったのが、機関投資家市場に本気で向き合える数少ないチーム、3iQでした。

Pascal St-Jean
3iQという会社は、北米初のビットコイン/イーサリアムの上場ファンドの設定や、これも北米初となるステーキング
[※3]機能付きのイーサリアム/ソラーナETFの上場など、常に暗号資産業界の先駆者として歩んできました。
ステーキング[※3]:特定の暗号資産を保有し、ブロックチェーンネットワークの維持・セキュリティに貢献することで報酬を受け取ることができる仕組み 。3iQは北米で初めてこの機能を備えたETF(上場投資信託)を上場させています 。

 

我々の拠点があるカナダでは、2019年から大手取引所の破綻が相次ぎ、暗号資産を取り巻く環境は混乱を極めていました。ただ、投資家は規制が未整備でも、欲しいものがあれば自らインターネットで『抜け道』を探してアクセスしてしまいます。自国に安全な選択肢がないために、結果として、海外の無規制な取引所やリスクの高いプラットフォームを投資家が利用してしまうという危険性もありました。

だからこそ、私たちは投資家に「安全・安心・シンプル」な規制に準拠した商品をいち早く提供し、世界中のできるだけ多くの個人に暗号資産へのアクセスを提供すべきだと考えました。それはビジネス機会というより、むしろ私たちにとっての使命だったと言えるでしょう。

Yo Nakagawa
マネックスグループの着想とも重なりますね。

コインチェック 田口

(マネックスグループ株式会社 執行役 中川 陽、3iQ Digital Holdings Inc. 社長兼CEO Pascal St-Jean )

2|顧客と「同じ言語で話せるか」という壁

 

 

Pascal St-Jean
ただ現実問題として、暗号資産がグローバルになり、誰もが民主的にアクセスできるようになるためには、機関投資家のチャネルを通る必要があります。それは、機関投資家が安心して投資できる水準を満たせば、結果として個人投資家にとっても安全な環境をつくることにつながるからです。

3iQのここ数年でのミッションは、まさにそうした機関投資家を根気強く教育し、パートナーになることでした。そしてその姿勢が、後に大手機関投資家からの信頼につながっていきました。我々がそれを遂行できた理由があるとすれば、それは私たちが彼らの「言語」を話せたからです。

 

Yo Nakagawa
私たちも機関投資家向けの資産運用を手掛ける様々な会社と会いましたが、「資産運用を手掛ける暗号資産会社」と「暗号資産を扱う資産運用会社」は似ているようで全く違う、という感覚がありました。ビジネスの相手が違うからです。

リテール向けなら、暗号資産ネイティブでイノベーター気質の強い企業が合っている。でも機関投資家が相手になると、彼らと同じ「言語」で対話できる体制が必要になります。

 

Pascal St-Jean
旧来の資産運用会社は、機関投資家の言語は理解しているけれど、新しいアイデアを取り逃してしまうことがあります。一方、「資産運用を手掛ける暗号資産会社」は、本当に革新的でスピードも速い。でも機関投資家から40ページに及ぶデューデリジェンス回答を求められた瞬間に、「これはどう答えればいいんだ?」と止まってしまいます。実際に、その水準を満たせる暗号資産運用チームは、世界でも数社しかないでしょう。

 

私たちは、その空白を埋める存在として、革新性と機関投資家の求める水準を同時に成立させる体制を作ってきました。それこそが、私たちのこの領域における競争力の源泉です。

 

3|資産クラスとして定着しつつある暗号資産

 

 

Yo Nakagawa
私たちが当初立てた仮説は、「暗号資産が長く残るなら、いずれ制度の中に組み込まれ、機関投資家の資金が入ってくる」というものでした。それは単なる期待ではなく、伝統的金融の歴史から導いた一つの帰結でした。
そしていま、その変化は確かな流れになりつつあります。世界各国で規制整備が進み、機関投資家向けの商品設計やガバナンス基準が明確になってきました。暗号資産ETFが承認され、年金基金やソブリン・ファンドがデジタル資産にアクセスする事例も増えています。

私たちが出会ったとき、それぞれが別の角度から同じ未来を見ていました。そしていま、その未来は少しずつ輪郭を帯び始めています。

 

Pascal St-Jean
暗号資産の未来を考えると、機関投資家が参入することで市場は流動性と規律を備え、その基準は個人投資家にも波及していきます。機関投資家は革新的な商品だけでなく、安心して資金を預けられるだけの信頼と基盤があって初めて、市場に参加します。そして、その信頼には、上場企業としてのガバナンス、長期的な視座、そして伝統金融とクリプトの双方を理解する体制が欠かせません。当社とマネックスグループは、議論を重ねる中で、その基盤を共に築いていけると確信しました。それは単なる戦略的判断ではなく、同じ未来を見ているという感覚に近いものです。そこに、このパートナーシップの出発点があったのだと思います。

【中編に続く】

 

 

2026年5月10日
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。