コインチェックで暗号資産を取引するときのプラットフォームにおいて重要なのはUser Interface(「UI」:直感的な操作画面)/ User Experience(「UX」:円滑な利用体験)です。意識していることとしては、画面の操作を通じてお客様が不安なく目的を達成できることです。暗号資産という新しい価値を扱うコインチェックにおいて、お客様の不安を「誠実さ」で解消し、取引への心理的障壁を下げることが最重要だと認識しており、それが競争戦略でもあると考えています。

 

当社では、社内でUI/UXを設計する際には、多様な背景を持つメンバーがフラットに議論し、論理的に「わかりやすさ」を突き詰める多様性を理解する土台があるように感じます。また、ユーザーのインサイトを深掘りするべく、時にはユーザーインタビューを行ったり、VOC(Voice of Customer:お客様から寄せられた意見や要望)を活用したり、ユーザーの行動を把握するため数値解析を行うなど、部署を越えて当社のバリューをそれぞれが意識した上で一貫した思想で磨き上げられるプロセスになっています。それこそが、7年連続ダウンロード数No.1という信頼の裏付けとなっています。

 

「新しい価値観を、もっと身近に」というビジョンが、いかにして現場の仕組みやチームの多様性と結びつき、独自のUI/UXを生み出しているのか。コインチェック株式会社開発・AI本部 事業統括部 プロダクトマネジメントグループ 田口 銀次に話を聞きました。

迷わないことで取引の障壁を下げる、シンプルな設計のあり方

暗号資産は、価格変動の大きさが投資機会を生む意味で魅力的な一方、専門用語の多さもあり、特に投資になじみのない方からは「興味はあるが、最初の一歩が踏み出しにくい」という感想を持たれがちです。コインチェックがお客様との初めての接点となることはもちろん、他社で一度暗号資産取引から離脱した方が再チャレンジする場になることも十分に想定しています。その最初の一歩で迷わせないことは、業界をリードする企業としての役割と私たちは考え、UI/UXを最重要課題と捉えてきました。

 

結果として、コインチェックのアプリは7年連続でダウンロード数No.1という評価をいただいています。しかし、私たちが提供しているのは派手な機能ではなく、シンプルで誤解なく伝えるための誠実かつ論理的な設計の積み重ねです。

 

実態が把握しづらい資産を扱う以上、UI/UXは単なる操作画面ではなく、不安なく判断できる状態をつくるための誠実なインターフェースであるべきです。「今、自分は何をしているのか」「次に何をすればよいのか」を自然に理解できること。そしてアプリを通じて「ワクワク」する体験を創出すること。これらを磨き続けることが、お客様の信頼に直結すると信じています。

コインチェック 田口
拡大
(コインチェック株式会社開発・AI本部 事業統括部 プロダクトマネジメントグループ 田口 銀次)

「当たり前」を疑い、多様な視点で追及する客観的な使いやすさ

高度な専門性が求められる分野であると共に、私たちコインチェックの強みは、金融業界の「当たり前」をあえて問い直す視点にあります。チームには暗号資産への習熟度が異なる多様なメンバーが在籍しており、非金融業界出身の私自身も、「この画面は初心者のお客様に伝わるのか?」という違和感を言葉にする役割を担っています。

 

この伝わりやすさへのこだわりを実現できる背景には、金融業界出身以外の意見を尊重するといった社内メンバーの多様性の理解やフォローが大きくあると思います。また、様々なドキュメントが社内に存在しますが、生成AIの社内活用を促進することで理解の促進が進むとともに、複雑性が高い仕様に関しても利活用することで最適な設計を行うことを意識しています。こうした多様な意見を受け入れ、効率化を生み出す体制と配慮が、部署をまたいだプロジェクトのスピードと質を支えています。専門家だけの閉じたチームで完結せず、多様な視点を取り入れながらわかりやすさを追求する仕組みがあるからこそ、誰にでも開かれた顧客体験が生まれているのです。

データと対話で論理を突き詰め、本質的な課題を解決

アプリをシンプルに保つことは、実は削ぎ落とすという葛藤の連続です。「これがないと不親切ではないか」という懸念を、私たちは主観ではなく論理によって答えを出しています。

 

例えば、VOCの利活用、ユーザーインタビューの実施、数値解析ツールを用いた課題の特定など、これらを通じて「本当のインサイト(真に向き合うべき課題)は何なのか」を把握するようにしています。さらなるわかりやすさの追求に向け、様々な職能と連携をすることで、法的要件や安全性を担保しながら、最短ルートで理解できる設計を突き詰めるプロセスこそが、企業理念である「新しい価値観を、もっと身近に」を具現化する道筋となっています。

 

 

部署間の連携が、安心、安全な導線を担保

シンプルさの裏側には、心理的安全性を守る仕組みも組み込まれています。

 

例えば暗号資産市場は価格変動が大きく、情報量が多いと初心者は不安を抱きやすいため、コインチェックは複雑なチャートや市場情報を敢えて示さず、親しみやすく安心感のある視覚デザインで「暗号資産に触れてみよう」という気持ちを後押しする設計にしています。

 

また、ユーザーにとって理解するのが難しいと思われる過剰な画面へのライティングを避けつつ、どう操作すべきかを直感的にわかるような購入体験を意識するようにしています。

 

このようなシームレスさも、安全性を確保した導線も、それを実現する議論がスムーズに進むのは、社内に「誠実な姿勢」というバリューが浸透し、それが業務設計にまで落とし込まれているからです。各チームが専門性を発揮しながらも、フラットに意見を出し合える社内の環境こそが、コインチェックの競争力の源泉となっています。

コインチェック 田口

デザインが「新しい価値観」を提示する未来へ

私は、自分のキャリア、ひいては人生を輝かせるために、自ら人生をデザインしていく「キャリアオーナーシップ」という考え方に深く共感しています 。

 

今後は、これまでの安心・安全・シンプルという土台の上に、使っていてワクワクするようなデザイン要素をさらに取り入れていきたいと考えています。

 

ブロックチェーン技術やNFT(Non-Fungible Token:非代替性トークン)は、個人の活動を支援し、人生の選択肢を広げる大きな可能性を秘めています。そうした新しい価値観が広がる世界に対し、私は強い希望を感じています。誰にとっても使いやすく、それでいて心が躍る体験をUI/UXで実現していく、その積み重ねこそが、暗号資産をもっと身近にして、多くの人が自分の人生をより自由にデザインできる社会に繋がっていくと考えています。

 


2026年2月10日
※社員の所属・役職、内容は取材当時のものです。