当社グループにおけるイノベーション

マネックスグループ株式会社(以下、「当社」)は、「常に変化し続ける未来に向けて、最先端のIT技術と、グローバルで普遍的な価値観とプロフェッショナリズムを備え、新しい時代におけるお金との付き合い方をデザインすると共に、個人の自己実現を可能にし、その生涯バランスシートを最良化すること」を目指すことを企業理念に掲げています。この企業理念の実現には、イノベーションが不可欠です。これまでも、当社及びグループ内各社(以下、総称して「当社グループ」)は、イノベーションを軸に企業成長を果たしてきました。当社グループのイノベーションには、『先見性』、『リスクテイク』、『バリューアップ』、『企業文化』の特徴があり、それらを活かして「常に変化する未来に向けた」成長を続けていきます。

先見性

コインチェックやトレードステーションのM&Aに見られるような当社グループの事業投資は、先見性のあるビジョンを定めることからスタートします。
インターネットの黎明期である1999年に金融サービスのオンライン化を見据えてオンライン証券としてのマネックス証券を創業したのち、当社のビジョンは、社会や技術の変化を先取して、刷新してきました。
例えば、スマートフォンの普及等によってインターネット上の取引がビジネスで不可欠となり、世界がボーダーレス化していく中、金融商品・サービスはグローバル取引が不可欠のため、グローバルにオンライン証券の拠点を持ち、相互でつながることが成長領域となることから、2011年に「グローバルビジョン」を掲げました。また、ブロックチェーン技術の実用化が進んだ2017年には、ブロックチェーンや暗号資産による資本市場の変革を見据えた「第二の創業」を掲げました。
現在は、新型コロナ禍でのデジタルトランスフォーメーションの結果、個人のライフスタイルや人生の在り方が多様化したことを受けて、2021年4月に当社の企業理念を「個人の自己実現を可能にし、生涯バランスシートを最良化すること」を目指したビジョンに改定し、アップデートを図りました。
こうした先見性のあるビジョンは、グローバルでの金融を含むあらゆる事象を詳細に把握し、未来の姿を踏まえて分析・議論する帰納法的なアプローチによって生み出されてきました。これまでの事業環境の変化に合わせて、当社のビジョンのアップデ―トを図ってきたことは、今後の社会構造の変革や事業拠点のグローバル化、さらには人材の多様性や人の生活の多様化が進む中でも、将来的に再現性の高いアプローチであると考えます。
また、2021年11月に、STEAM教育を通じて個人の自己実現に資する事業を展開する株式会社ヴィリング、さらに2022年11月にはバイリンガル講師による質の高い英語教育事業を展開する株式会社Selanが当社グループに入りました。これらは、企業理念の改定によるビジネスモデルの変革が具現化した取組みです。今後は、事業領域の拡大により、これまで以上に当社グループが得られる情報や見方の幅が広がり、再現性の確度はさらに高まると考えます。

リスクテイク

先見性のあるビジョンを定め、そのビジョンを実行するためには、適切なリスクコントロールのもと、果敢にリスクテイクする判断が必要です。当社グループが非連続的な成長を遂げてきたのは、リスクをコントロールするだけでなく、積極的にリスクをとって、将来に果実を獲得すべきという意思があったからです。例えば、「グローバルビジョン」でのトレードステーション(「バリューアップ」の章で詳述)、「第二の創業」におけるコインチェックは、M&Aを通じて当社グループ入りを遂げ、当社グループの事業の柱となっています。
果敢なリスクテイクには、その事業を定量的かつ適切にリスク評価することが必要です。まずは、新たなビジョンを具現化する上で、どんなリスクが潜んでいて、そのリスクがコントロール可能かを判断します。その結果を分析、考慮して、ビジョンの具現化に向けて事業の実行を決断することができます。
当社グループが実現した過去のM&Aや事業領域の拡大において、そのすべてが果敢なリスクテイクと適切なリスクコンロールの歴史であり、その両輪が事業の発展には不可欠です。さらにM&Aの検討においては、リスクテイクまでの決断に時間の猶予が限られていることばかりです。
2018年4月のコインチェックの当社グループ入りの際は、緊急性の高い重要案件でありながら、2017年10月に「第二の創業」を掲げる際に暗号資産ビジネス参入を検討していたため、当社取締役会においても暗号資産ビジネスにおける理解が高まっていたことが奏効して、極めて短い期間で重要な決断を実施できました。また、当該M&Aの過程において、既存株主との株式譲渡契約にアーンアウト条項を盛り込んだことは、当社が果敢にリスクテイクをする上で、どのようにリスクコンロールすべきかを検討した結果です。将来の暗号資産業界が不確実である中、コインチェックの株式取得価格がフェアバリューになるようアーンアウト条項を設定したことは、リスクコントロールの手段として、最善の策であったと考えます。

バリューアップ

先見性のあるビジョンを定めて、適切なリスクテイクを実施したあとには、そのリスクテイクを実らせるためのバリューアップが必要です。
当社グループの経営陣は、グループ各社の経営陣との密な連携により、各社の経営課題に取り組む体制構築を強化する役割を果たしています。トレードステーショングループは、経営体制の強化やブランディングの再構築により、グループ入り後の10年間で預かり資産は約5倍、営業収益額は約1.5倍に拡大し、現在では、グループにおける事業の柱となるまでに成長しました。また、コインチェックは、暗号資産の不正流出対策を講じたセキュリティや内部管理態勢の強化を経て、暗号資産交換業者の登録を果たすことができました。グループ入り後の3年間で口座数は約2倍、預かり資産は約3倍、営業収益額は約14倍に増加し、また、収益規模に見合ったコスト管理を徹底することで固定費の大幅な削減を達成しました。これら2社とも、当社グループの企業価値の向上に貢献してきました。
これらのバリューアップにおいては、短期的な利益の創出だけでなく、長期的な企業価値の向上を軸とする事業基盤の構築を重視しています。M&A等によってグループ入りする企業は、当社が定める企業理念の実現にとって必要不可欠な存在であり、それらの企業の長所が失われることのないよう、当社グループは各社の個性や企業文化を尊重しています。
例えば、米国のトレードステーションは、日本のマネックス証券と異なる事業特性があり、アクティブなトレーダー層を抱え、その特徴あるトレーダー層に訴求できる取引プラットフォームを提供しています。当社グループ入り後、米国のインターネット証券の事業環境に即したビジネスモデル展開を進めてきたのは、トレードステーション単体での中長期的なバリューアップが当社グループ全体の企業価値向上につながるという考えからです。そのため、当社グループ入りから一貫して、米国の執行メンバーが経営を担っており、そのメンバーが自社で定めたビジョンを実現することでバリューアップを果たしてきました。
一方、コインチェックは、当社グループにおいて新たな事業領域である暗号資産取引業として、金融商品取引業の顧客層と比較して若年層の顧客基盤を構築しており、コインチェック単体でのバリューアップを実現してきました。
こうした長期的なバリューアップやPMI(Post Merger Integration)のアプローチは、利益の創出やビジョンの実現までに時間を要することがあります。一方、それぞれのグループ会社が自立した経営を行うことで収益や企業価値を生み出しており、当社グループとして、事業環境の変化に強い分散型の事業ポートフォリオを確立しています。

企業文化

当社グループは、お客様の資産を預かる金融商品取引業者および暗号資産交換業者として監督官庁における規制対応が必要な領域と、インターネット、ブロックチェーン、そしてメタバースといった新たな成長領域の両方で、自社独自のテクノロジーを活用し、グローバルに事業展開してきました。
そのため、創業以来、当社グループ内にはさまざまな価値観やカルチャーが混在しており、その多様性が企業の成長の源泉として機能してきました。多様性を公平にとらえ、包摂する取組みとしてのダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン(DEI)をさらに加速させていきます。
例えば、日本の金融商品取引業者であるマネックス証券は、日本のインターネット証券のうち、セゾン証券、日興ビーンズ証券、オリックス証券などのM&Aにより、規模を拡大してきました。M&A時にグループ入りした従業員については、出身会社や年齢にかかわらず積極的に経営層にも登用しています。また、多様性のある人材が、多様な働き方を実現できるように、男女の給与格差を生まない給与体系や、社員が互いにリスペクトしながら、能力主義で事業を推進できる仕組みづくりとして、自主性、公正性および企業理念の具現化を推進することで、DEIの尊重にもつながるような企業文化の浸透に取り組んでいます。
こうした多様性を重視した企業文化は、先見性のあるビジョンを実行するために広範なインプットから帰納法的に定めるアプローチにおいても、子会社それぞれの個性や企業文化を維持しながらバリューアップするアプローチにおいても、それらの土台となり、イノベーションを推進する重要な要素となっています。