「ART IN THE OFFICE」は、現代アートが未開拓の表現を追求し、社会の様々な問題を提起する姿勢に共感し、当社を通じて新進気鋭の現代アートアーティストを支援する場づくりをしたいとの想いから、2008年より当社が社会貢献活動並びに社員啓発活動の一環として継続して実施しているプログラムです。2019年度は、87の応募作品案の中から、社員とのコミュニケーションを通じてストーリーとキャラクターを立ち上げるユニークさ、また、自身にとって初めてのプロセスに挑戦している点が評価され、吉田桃子氏の作品「first "I.U" zone. 2」が受賞作品として選出されました。吉田桃子氏(※“吉”は、土の下に口)を選出しました。

 

審査員一同(左より:德山氏、塩見氏、浦野氏、鎧塚氏、松本)と選出された作品案
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審査員一同(左より:德山氏、塩見氏、浦野氏、鎧塚氏、松本)と選出された作品案

選出作品:「first "I.U" zone.2」

選出作品:「first "I.U" zone.2」
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参考作品:first "I.U"/2018/テトロン、アクリル絵具

 

※無断転載・複製を禁じます。

※first "I.U"は「ART IN THE OFFICE 2019」の受賞作品ではなく、吉田氏の過去作品を今回の作品案の参考として掲載するものです。

受賞作品は2019年6月以降に制作予定です。

 

吉田氏作品コンセプトおよびコメント:

「first "I.U" zone.2」

私は今まで、好きな音楽を聞いている時に頭に浮かんでくる映像的イメージを、絵画という永続的な形式に閉じ込めることで、見る人と高揚感を共有し新たな感情を呼び起こすようなものに書き換えることを目標に制作を続けてきました。その映像的イメージは、記憶と現実の風景が混ざり合う舞台の中に、自分自身や親しい人からインスピレーションを得て生まれたキャラクターが出現する断片的な映画のようなものです。今回の展示では、マネックスの社員の方とのワークショップの中で「自分の分身のような存在としてキャラクターを生み出す」という行為を体験してもらい、最終的に絵の中に登場するキャラクターを制作します。今まで自分自身の想像の中でしか作ることのできなかったものに、初めて出会い、環境も大きく違う人々の中から生まれるイメージを取り込むことは、私の作品の大きな転機になると思います。そして、そのキャラクターが「描く人と観る人」、「空想と現実」を繋ぐような存在として現れ、このプレスルームで日々生まれ続けるストーリーとリンクすることで、見る人に様々なインスピレーションを与えるような空間を作り出すことを目指します。

吉田桃子氏

吉田 桃子氏プロフィール

1989年兵庫県生まれ、2016年京都市立芸術大学院修士過程修了。音楽を聴いているときの高揚感や頭に浮かぶ映像的イメージを絵画の形式に閉じ込め、観る人にその高揚感を共有させる装置とする作品制作を行っている。アートアワードトーキョー丸の内2016 三菱地所賞受賞、2016年京都市立芸術大学大学院市長賞受賞。これまでの個展に、「scene UKH ver.3.1」ART ZONE / 京都(2017)、「scene UKH ver.3」三菱一号館美術館歴史資料室 /東京(2017)、グループ展に「Kyoto Art for Tomorrow 2019-京都新鋭選抜展-」京都文化博物館(2019)、「京芸 transmit program 2018」京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA/京都(2018)などがある。

吉田 桃子氏 website:https://mt0991.wixsite.com/rainbowpicha/home

審査員コメント(50音順)

浦野 むつみ氏:ANOMALY ディレクター
応募作品資料をいっせいに見るという審査方法は初めてで、戸惑いもありましたが、審査員の皆さまと意見交換をしながら、迷ったり再考したりする過程を楽しませていただきました。
プレスルームの空間に視覚的にマッチする作品という以上に、社員の皆さまや来訪者の方々に新しい視点の発見や発想の転換を促し、何かしらの作用を生み出すような作品を期待しましたが、全体的に、素材や技法にとらわれ過ぎている作品が多かった印象を受けました。その中でも、受賞作は、紙にアクリル絵具という見慣れた素材を用いながらも、確かな表現力と大胆で冒険的な創造性と想像力が発揮されていました。社員の皆さんとのワークショップを経て生まれたキャラクターの登場によって、オフィスという日常空間がどのように変容するのか今からとても楽しみです。

塩見有子氏(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]理事長)
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撮影:
越間有紀子

塩見 有子氏:NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ[AIT/エイト]理事長

最近の傾向として幅広い年齢層や地域性が見られますが、今年も大学生からリタイヤされた方まで、日本各地および海外からの応募もあり、それぞれの視点から捉えた世の中の動きを感じさせる提案が目を引きました。そのなかで、吉田さんの作品は彼女の世代感覚や時代性を反映させたものであり、かつ具体性が高いワークショップの提案は「実験してほしい」と思わせるものでした。社員との交流を通じて、まだ見ぬストーリーがプレスルームに広がること、「いま、このときに」にしかできない作品の完成が今から楽しみです。
 

德山 拓一氏:森美術館 アソシエイト・キュレーター

德山 拓一氏:森美術館 アソシエイト・キュレーター
審査当日に全部の作品プランを見て、みなさんとディスカッションし一人を選ぶという、非常にエキサイティングな場に出席できてすごく楽しかったです。今の時代の姿や、アーティストが感じている感性がそれぞれに表現された作品を数多く見ることを通して、社会の現状が全ての人にとって幸せであるとは言えないのだと、改めて感じました。そうした状況で日々制作しているアーティストたちの声や、創作に対する姿勢を生で見たようで、意義深い経験でした。今回選ばれた吉田さんはワークショップの部分が非常に楽しみです。
どうやって社員の声を掬い上げて自分の作品に昇華できるのか、今から期待しています。

松本  大:マネックスグループ株式会社 代表執行役社長CEO

ついに12年目となった「ART IN THE OFFICE」。今年も多くの応募をいただきました。今回も幅広い作品アイデアの数々、審査はとっても楽しませてもらいました!特に今回は、審査会が大盛り上がりして、審査員の気持ちも審査会プロセスの中で揺れに揺れ、作品を絞り込んでいく中で、お気に入りの作品が変わっていくという、ライブな審査会ならではの醍醐味もありました。受賞作品は久し振りのカラフルな作品。ヴァーチャル空間に移動したような雰囲気があり、マネックスのエントランスと会議室が、一体どのような空間になるのか、とっても楽しみです!
 

鎧塚 俊彦氏:Toshi Yoroizukaオーナーシェフ

鎧塚 俊彦氏:Toshi Yoroizukaオーナーシェフ

今日は本当に楽しかったです。僕はアートが大好きなのですが、ただやはり僕はケーキ屋さんとして、商売をしていますので、お客様がお菓子を召し上がる時の空間がアーティスティックに振れすぎると、お客様にあまり受け容れられないような現実の中でも30年間やってきています。そういった目線からすると他の審査員の方と見方が違ったのかなと思いますが、皆さんの意見を聞きながら、心の内面から来るアートというものはやはり非常に大切だな、やっぱりアートって素晴らしいなと、改めて実感させて頂きました。とにかく今は作品がここにどういう風に展開されていくのか、出来上がるのがものすごく楽しみで仕方がないですね。