2008年より当グループが社会文化活動の一環として行っている「ART IN THE OFFICE」プログラムについて、当社の子会社であるマネックス証券が、本年度も「ART IN THE OFFICE 2012」として実施することといたしました。このたび、106点の応募作品案の中から、本年度の作品制作アーティストとして、福士朋子氏を選出しました。

選出作品:take off / landing

選出作品:take off / landing
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福士朋子氏コメントおよび作品コンセプト:
私は日常生活の中で頭の隅を一瞬よぎっては忘れてしまうようなことや、つぶやきのような言葉から作品を作っています。今回の応募では、マネックス証券新オフィスのプレスルームに、世界中からさまざまな人が訪れて最新の情報を交換し、再び次の目的地へと旅立って行く空間をイメージしました。そして人々の行き交う空港と『take off /landing』というテーマが浮かびました。私の作品と、マネックス証券のオフィスと社員の方々、さらに来訪者とのコラボレーションの一年となることを願います。新しいオフィスの出発に、私にとっても新たな挑戦の機会を与えていただいたことに心より感謝しております。

福士朋子(ふくし ともこ)氏プロフィール
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撮影:越間有紀子

福士朋子(ふくし ともこ)氏プロフィール
2005年東京芸術大学大学院美術研究科博士後期課程美術専攻油画修了。風景をモチーフにしたペインティングを経て、現在はホワイトボードにマジック、既製品のマグネットなどを使って、マンガの要素を取り入れた作品を制作。スパイラルが主催する「SICF12」にてグランプリ受賞(2011)。東京文化発信プロジェクトのストリートペインティング・プロジェクトでは東京芸術劇場の工事仮囲いに作品「見て見て☆見ないで」を展示(2011-2012)。並行してマンガをウェブサイト「少女画帖」で連載中。

審査員コメント

塩見 有子氏(NPO法人アーツイニシアティヴトウキョウ理事長)
漫画かと思ってよくみると、ちょっと違う。なんだか変だ。「離陸よりも」「着陸の方が好きです」とか「自分のスーツケースの場所など」「別にどこでもよいのですが」という誰かのつぶやき、あるいは心の声が聞こえてくる。そうした会話を友人としたことがあるような、でもそのときに自分がどちらを好きと言ったのか、あるいは本当にそんなことを言ったのかもわからなくなるような言葉たち。それに、離陸と着陸というと旅立ちと帰国のようだけど、もしかしたらすべて旅立ちかもしれないし、すべて帰国かもしれず、相反すると思っていた言葉たちが、裏切り始める不思議な感覚。この力の抜け感は、言葉の選び方や、コマとコマの絶妙な離れ具合にも表れていて、なんだか今の時代感にもピンとくる。初めてオフィスを訪れて現代アートを見る人も、毎年、楽しみにしてくれる人たちも、今まで、なんだかよくわからないと思っていた人たちも、「やっぱり離陸でしょー」とか「いやいや、着陸よー」とか話しながら、その先にある作品の奥深さと面白さにはっとさせられるのではないかと思う。

西川 美穂子氏(東京都現代美術館学芸員)
最終選考に残ったアーティストのレベルは高く、審査は難しいものでした。どのような基準で選ぶかを考える際、一つは、より多くの人に何かしらのひっかかりがあるような間口の広さを持っていること。もう一つは、仕上がる作品のクオリティーが期待できることを意識しました。
受賞作品は、見た目のインパクトとユーモアで惹きつけた上で、見る人に様々な考えるきっかけを与えてくれる点が評価したポイントでした。
開催5 年目にあたる本年の応募者のレベルには、若干のばらつきがあるように感じられました。公募展は年月を経ることで、プログラムが定着していくものだと思います。今後もぜひこの素晴らしいプログラムが継続され、多くの新しい才能が発掘されることを期待します。

藤田 晋氏(株式会社サイバーエージェント代表取締役社長CEO)
松本社長が取材やインタビューを受ける際、背景としてふさわしい作品は何かということを考えて審査をしました。また、社内において際立ちすぎず、働く人に馴染む作品かどうか。その一方で、大胆で斬新な発想のものを求めました。これらの条件が揃うのは難しいのですが、最終的に、みんなが好きになりそうな作品であることが決め手でした。また、マネックスはグローバルな企業なので、マンガという日本文化の要素があることも良いと思いました。
審査会に参加して、理念に一貫性があり、現代アートに親近感の湧くプログラムだと感じました。

松本 大(マネックス証券代表取締役会長CEO)
毎年受賞作品は、私にとって本当に新しい出会いであり驚きです。毎年、最初は強く心に残らなかった作品が、他の審査員の方々が拾い上げ、その魅力を説いて、そして次第に自分も心を惹かれていきます。今回も同じような展開でした。take off は私も好きな言葉です。オフィスの中に新しい物語と刺激がやってくるのが、今から待ち遠しいです。
ART IN THE OFFICEは、新しい作品・作家と出会えるのが毎年の楽しみであることは当然ですが、新しい審査員の方々とお会いするのも実は楽しみのひとつです。今年は山本さん、西川さんという素敵な方々、そしてビジネス界からはサイバーエージェントの藤田さんに参加していただき、また新しい刺激を感じました。変えない部分と変える部分を持ちながら、今後も「ART IN THE OFFICE」を続けていきたいと思います。

山本 裕子氏(山本現代代表)
どの作品案も面白かったのですが、オフィス空間での実現可能性を念頭に審査を行いました。また、オフィスという場に合うかだけでなく、作品がオフィスを離れたときにも、一つのアートピースとして成立するかという点も重視しました。結果的に、親しみやすく、見る人に考えるきっかけを与える、良い作品が選ばれたと思います。 本プログラムの審査会に参加したことはとても面白かったですし、勉強になりました。どうもありがとうございました。