創業以来、変革を繰り返しながら成長を続けてきたマネックスグループ。組織の先頭に立って引っ張るカリスマ型でもなく、後ろから支えるサーバント型でもない――。清明さんが自らのリーダーシップを言語化した言葉は、意外にも「おかん型」でした。「チームの仲間が楽しそうに働ける環境をつくりたい」と語る温かな眼差しと、経営上のリスクを見逃さない「グッドニュースもバッドニュースも、素早く共有できるカルチャー」の醸成。人を真ん中に置いたしなやかな組織づくりの真髄について、Xrossing編集部が聞きました。
<プロフィール >
2001年株式会社三和銀行(現 株式会社三菱UFJ銀行)入行、2006年に株式会社MKSパートナーズに転じ、2009年にマネックス・ハンブレクト株式会社(現マネックス証券)入社。2011年マネックス・ハンブレクト株式会社代表取締役社長を経て、2019年マネックス証券株式会社代表取締役社長(2024年より取締役社長執行役員、現任)に就任。2020年当社代表執行役COO、2021年当社代表執行役COO兼CFOに就任。2021年当社取締役就任、2022年取締役兼代表執行役 Co-CEO兼CFO就任、2023年6月より取締役兼代表執行役社長CEO。
― 組織を前に進めていく経営者にはさまざまなリーダーシップの類型があると言われています。清明さんはご自身をどんなタイプのリーダーだと思いますか?
いわゆるビジョナリー型のリーダーシップで組織を引っ張るタイプではないと思っています。もちろん、意思決定は自分でしますし、実現したい未来のイメージも明確にありますが、「自分が先頭に立って何もかも示していきたい」という感覚とは少し違いますね。かといって、フォロワーシップを発揮して組織をまとめるサーバント型(支援型)というタイプにも、自分が当てはまるとは思えないんですよね。CEOになるまでは「サーバント型かも」と思っていましたが、実際になってみるとやっぱり違うなと。
もちろん、組織として高い目標を掲げ、それを実現するための仕組みやシステムを動かしていくトップダウンのアプローチは経営において不可欠ですし、私も徹底して行っています。
ただ、私自身が主役となって個人の成功を誇示したいという思いはまったくありません。それよりも、一緒に働く仲間たちが心地よく力を発揮し、組織全体としてのアウトプットがどう最大化されるかに、最大の関心があるんです。チームのみんなが前向きにエネルギーを注げる状態をつくることが、結果として最も高い目標達成につながっていく。だから、多分「おかん」なんです。おかん型リーダーシップなんです。
― おかん型リーダーシップとはユニークな表現ですね。
実はこれ、登壇でご一緒した社外のある方から、「おかんみたい」と言われて(笑)。よくよく考えると「なるほど」と腑に落ちた表現なんです。
おかんというと、「大阪のおばちゃん」をイメージする方が多いと思うのですが、私は関西出身で、私の母がまさに「おかん」だったんです。近所の子どもたちをしょっちゅう食事に呼んだり、休日に遊園地に連れて行ったりしていて。とりわけ裕福な家庭ではなかったのですが、母は近くで暮らす子どもたちが楽しそうにしている笑顔がとにかく好きで、地域のコミュニティを豊かにしたいという気持ちが強かったんでしょうね。
どの子に対しても画一的に接するのではなく、それぞれの個性を面白がって伸ばそうとする。一方で、いつも家事や仕事のマルチタスクで忙しくしているからこそ、子どもたちに対しても「自分のことは自分でやりなさい」と自然に自律を求める。ビジネスの教科書には載っていないスタイルかもしれませんが、私にとっては最も身近で偉大なリーダーシップのお手本であり、今の自分のマネジメントスタイルとしても一番しっくりきているんです。
私も今、経営をしながら、母に似たところがあるなと感じることがあります。
キャリアを重ねるにつれ、管轄する組織の規模は広がりましたが、どんなに組織が大きくなっても、「チームのみんながやりがいをもって楽しそうに仕事をしている顔を見ていたい」という気持ちは変わらないです。
たとえば、社員が家に帰ってご家族と囲む食卓で「今日、職場でこんなことがあってね」という会話をしたり、久しぶりに会ったご友人に「今、マネックスグループで働いているんだ」と誇らしく話したり、そんな風景が増えるといいなと思っています。CEOである私の役割は、そんな風景を増やすために環境を整えることです。
業績を伸ばすことはもちろんですが、会社の中で流れる空気や会社の“性格”のようなものを整えていくことを大事にしたい。「何をするか(DO)」の前に「どうありたいか(BE)」を語れる人が多い会社は、きっとポジティブな空気に満ちて、結果としてパフォーマンスも上がるはずです。
―「おかん型」とは、具体的にはどんな思考や行動を選ぶリーダーシップなのでしょうか?
あらためて考えてみると、「なぜ自分にこの言葉がしっくりくるのか」、いくつか共感するポイントがあることに気づきました。
まず一つ目は、「一人ひとりをよく見ている」ということ。子育てもチーム育成も同じで、画一的に扱うのではなく、「この子の良さは何だろう」「どうすれば個性が活きるだろう」と常に観察しているんです。
二つ目は、やっぱり「世話焼き」なところですね。私の母がまさにそうでした。たとえば、地元のコンビニの前でたむろしているような、ちょっと“やんちゃ”な同級生がいたんですね。そんな子たちに対しても、母は通りがかりに「あんたら、そこでそんなことしてたらあかんで!」と平気で声をかけるんです。当時の私は「お母さん、やめてよ……」と本当に嫌だったのですが(笑)、相手が誰であれ、見て見ぬ振りができない。放っておけないんですよね。
そして三つ目は、「言うべきことはきちんと言う」こと。「それは違うんじゃない?」「あんた、もっとできるはずやろ」と、ダメなときははっきり叱る。でもそれは、相手の可能性を信じている期待の裏返しなんです。
―見過ごさずに関わる一方で、単に口うるさいだけでもないのが「おかん」なのですね。
そうなんです。だから四つ目は、「最後は本人にやらせる」なんです。「あんたならできるから、やってみ!」と背中を押して送り出す。おかん自身も仕事や家事で忙しいですから、手取り足取り過保護にするのではなく、「あとは信じて任せるわ」と本人の自律に委ねるんです。
そして五つ目が、「失敗しても見捨てない」こと。家族ですから、失敗したって関係が終わるわけではありません。本気で叱ることはあっても、最後は「まったく、しゃあないなぁ」と言いながら、本人がまた自分の足で立ち上がるまで根気強く待つ。
人を見ていて、放っておかない。だけど、決して甘やかさない。包容力をもって見守り、信じて任せる――。この“おかん”のような関わり方は、私にとって最も自然で、しっくりくるリーダーシップのあり方なんです。
「おかん」というと女性ならではのものと思われるかもしれませんが、決して「母性」と直結するものではありません。男性リーダーの中にも、こうした「おかん型」の包容力と厳しさを持ってチームを育てている方はたくさんいらっしゃるはずです。
― 清明さんはCEOという立場でありながら、社内のメンバーにも非常にフラットに関わろうとする姿勢が見て取れますが、日頃のコミュニケーションで意識されていることはありますか?
そうですね。私も周囲の人の変化に気づくと放っておけない気質ではあるかもしれません。
日頃直接関わるメンバーの中で「最近ちょっと元気がないな」と感じる人がいると、ついつい気になって「今度ちょっとお茶しながら雑談しよう」と声をかけます。
私はあまり立場を気にしないですし、本当にただのお喋りに誘っているつもりなのですが、相手はびっくりして「雑談」と言っているのにペンとノートを持参してきたり(笑)。本当にたわいない会話をして様子を見つつ、「何もなかったらいいんだけれど、最近、仕事や仕事外で何か引っかかっていることがある?」と聞くこともあるんです。すると、やっぱり何かしたら問題を抱えていることは多くて、解決のためのアクションをとることになりますね。
気づかぬふりで声をかけなければ見えなかった問題でしょうし、人によっては「問題の数を増やすのは面倒」と考えるリーダーもいるかもしれません。たしかに細やかに気を配ることで拾い上げる問題の数は増えますが、私はむしろ問題が早く見つかるのは大歓迎なんです。
人がたくさん集まって協力しながら何かを成し遂げようとするときに、問題は起きて当然。起きないほうが不自然ですよね? 人に関心を持って接していれば、ちょっとした異変にも早く気づける。「そんなもんでしょ」という大らかな気持ちで向き合っています。
むしろ怖いのは、問題が“見えなくなる”ことです。
経営上のリスクマネジメントとして、問題はできるだけ早く把握するのが鉄則ですが、一般的に、組織のレポートラインは階層が上になるほど、現場で起きている「問題」が見えづらくなってしまいます。特に金融という社会的責任も大きい領域を扱っている当社においては、ここは本当に注意すべきポイントだと考えています。
だからこそ、できるだけバイアスがかかっていない状態で情報をキャッチできるよう意識しています。悪いニュースであっても報告しやすいように、普段から気になったことや分からないことは自分からどんどん聞くようにしています。日常的な雑談や会話の延長線上にあるからこそ、耳の痛い情報や問題点も自然と耳に入ってくるはずですから。
そして、実際にそうしたバッドニュースを聞いたときに絶対にブレてはならないのが、「お客様ファースト」の視点です。まず真っ先に考えるべきは、社内での責任追及ではなく、お客様への影響を最小限に抑えるための対応です。問題が起きた直後に社内の誰が悪かったのかを議論したところで、お客様には何の関係もありませんから。
もちろん、事態が落ち着いた後には再発を防ぐための真因の追究を徹底して行いますが、渦中においてはまず、お客様のために最短でベストなリカバリーを尽くす。金融という社会基盤を預かる私たちにとって、これこそが最も誠実なスタンスであると考えています。
「報告して」ではなく「教えて」という表現を使っているのにもこだわりがあります。
「報告」というと、きれいに整ったレポートを用意しなければという意識が働いて、問題が“お化粧”されてしまう可能性があるからです。正しい経営判断をするには、できるだけバイアスがかかっていない状態で問題を把握したいので、「報告」ではなく「起きたことをそのまま教えて」と伝えます。
部下からいつでも情報をもらえる上司になるためには、日頃から上司も身の回りで起きたことをこまめにチームで共有して、周りの意見を聞くようなコミュニケーションをしたほうがいいと思います。
定期的な部会で部下に対して「今週の達成事項を報告してください」と求める前に、まずは上司のほうから「昨日、私はこんな人に会ってこんな話を聞いて、すごく参考になったんです。皆さんはどう思いますか?」と話し出すほうが、意見を言いやすい雰囲気が生まれるのではないでしょうか。
グッドニュースもバッドニュースも、素早く共有できるカルチャーを、これからもグループ全体で育てていきたいと思います。

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- トレードステーションの社員と交流する清明
Xrossing編集部
マネックスグループの「今」を分かりやすく魅力的に届けるために、フリーランスライターの宮本恵理子氏と社内メンバーがタッグを組み発信をしていきます。
宮本恵理子氏
2001年、日経ホーム出版社(現・日経BP社)入社。「日経WOMAN」などの編集部を経て、2009年末編集者兼ライターとして独立。さまざまな分野で活躍する人の仕事論やライフストーリー、個人や家族を主体としたノンフィクション・インタビューを中心に活動しています。
ブランドデザイン室
グループの理念や価値を可視化・構造化し、一貫した訴求で長期的なブランド資産を築くため2025年に新設された部署です。




