​​「会社は、人がいてこそ成り立つものだと思います。」​ 

 

​​そう語ったのは、TradeStationの人事担当役員を務めるJessica Pioneだ。AIの活用が加速し、働き方が大きく変化するいま、人事に求められる役割も広がり続けている。それでも一貫して大切にしているのは、いつの時代も変わらない“人を中心に据えること”だった。​ 

 

​​「人事は、毎年少しずつ役割が変わっていく仕事です。AIが台頭し、法制度も変わる。だからこそ常に新しいことに目を向けて、会社を守りながら、社員にとってよりよい職場を作っていかなければなりません。」​ 

 

​​TradeStationに入社して13年、人事一筋のキャリアで、現在人事部門を統括する立場にあるJessicaに、これまでの自身のキャリアの歩みや変化の激しい環境の中で大切にしてきたこと、そしてマネックスグループに共通する価値観について話を聞いた。​ 

​人を支える仕事が、私の原点​

​​キャリアの出発点は、当初描いていた未来とは少し違っていた。法科大学院への進学を目指していた彼女は、生活の基盤を整えるために仕事を始める。そこで出会ったのが、人事の世界だった。​ 

 

​​「最初は一時的な仕事のつもりでした。でも、そこで人事のディレクターだった方が私を見て、『人事のことを教えたい』と言ってくれたんです。」​ 

 

​​最初に担当したのは、福利厚生や給与に関わる業務だった。やがて様々な仕事を通じて、社員の個人的な事情に触れる場面にも直面した。健康上の問題を抱え、支援を必要とする社員と向き合うことも少なくなかった。​ 

 

​​「福利厚生の仕事をしていると、社員の人生に深く関わることがあります。時に健康面で大変な状況にある方から相談を受けることもある。そんな一人ひとりに寄り添う経験を重ねる中で、人事という仕事に大きなやりがいを感じるようになりました。」​ 

 

​​「制度を運用する仕事」以上に、「人を支える仕事」としての人事に惹かれ、その後はキャリアを支えてくれた二人のメンターに恵まれながら着実に経験を重ね​​、TradeStationにてDirector of HR、Vice President of HRを経て、現在の人事担当役員に至った。​ 

 

​​「私は本当に運がよかったと思います。素晴らしいリーダーたちが、私の成長を支え、導いてくれました。」​ 

 

​​人に支えられて育ったからこそ、今度は自分が誰かを支える番だ。その感覚がリーダーシップの根底にある。​ 

​​変化の時代に、人事が守るべきもの​

​​Jessicaが人事を語るとき、繰り返し出てくる言葉がある。それは「変化」だ。​ 

 

​​「世の中では常に新しいことが起きていて、そのスピードは目まぐるしいものです。そのため、人事の役割も同じままではいられません。」​ 

 

​​特に大きな変化として挙げたのが、リモートワークの定着とAIの進化だった。対面が前提ではなくなったことで、採用やオンボーディング(新入社員や中途採用者が、早く会社やチームに慣れて力を発揮できるよう支援するプロセス)の在り方も大きく変わった。​ 

 

​​TradeStationでは、そうした変化に対応するため、採用プロセスそのものを見直してきた。​ 

 

​​「提出情報に嘘や偽りがないか、法的に雇い入れが可能な本人であるかを企業として確認・調査する目的の本人確認やスクリーニングは、特別な対応ではなく採用プロセスの一部として取り入れています。会社を守ることと、社員にとってよい職場にすることの両方が大切です。」​ 

 

​​また、人事が向き合う「変化」は、テクノロジーだけではない。TradeStationは北米・中南米・ヨーロッパに事業を展開しており、それぞれ異なる法制度や雇用慣行への対応も、人事の重要な役割となっている。​ 

 

​​さらにAIは、採用の現場そのものも変えつつある。応募者がAIを活用して履歴書や面接準備を行うことが一般的になりつつある今、マネージャーには表面的な回答だけでなく、行動や経験、判断力をより深く理解する対話が求められている。​ 

 

​​「これからは、より具体的な行動や経験に踏み込む面接が必要になります。質問の仕方も、もっと工夫していかなければなりません。」​ 

 

​​AIの活用は採用だけにとどまらない。TradeStationでは、人事評価や人材育成など社員に関わる意思決定にAIを活用する場面も広がっており、人事部門はそのガバナンスを担う役割も果たしている。​ 

 

​​「職場におけるAIは、単なるテクノロジーの問題ではありません。社員のキャリアに影響を与える以上、誰かがそのルールを定め、責任を持たなければなりません。それは人事も担うべき役割だと考えています。」​ 

 

​​テクノロジーはこれからも働き方を変えていくだろう。しかし、最後に判断し、信頼を築くのは人である。そのバランスこそが、Jessicaの考える現代の人事の本質である。​ 

​​​​つながりは、仕組みだけでは生まれない​

​​リモートワークが定着したTradeStationでは、社員同士のつながりをどう育むかが大きなテーマになっている。答えは制度だけではないと言う。​ 

 

​​「リモートで働くと、どうしても孤立感が生まれやすくなります。だからこそ、マネージャーは社員と日常的につながり、定期的にone-on-oneの時間を持つことが大切です。」​ 

 

​​こうした考え方は、TradeStationの人材育成にも反映されている。リーダーシップ研修やエグゼクティブコーチング、新任マネージャー向け研修に加え、重要ポジションを見据えたサクセッションプランニングなど、将来の組織を支えるリーダー育成にも力を入れている。​ 

 

​​また、直近のカルチャーサーベイでは263名の社員が回答し、人材育成やメンター制度は最も高い評価を得た項目の一つとなった。組織文化全体の評価も5点満点中4.15と、高いスコアにつながっている。​ 

 

​​「マネージャーがすべてを一人で抱える必要はありません。人事は常に伴走しながら、社員を支え、課題を一緒に乗り越えていきます。」​ 

 

​​また、組織文化は社員同士が学び合い、支え合う機会によって育まれると考えている。その象徴がEmployee Resource Group(ERG)という従業員が主体となって運営するグループだ。​ 

 

​​TradeStationでは、Women in FinTech、Black ERG、Chess Club、Markets and Trading ERGの4つのグループが社員主体で運営されている。それぞれ目的は異なるが、部署や拠点を越えて社員同士がつながる場をつくるという共通の役割を担っている。​ 

 

​​「ERGは単なるイベントではありません。社員がつながり、学び合い、支え合う場です。エンゲージメント向上にも確かな効果を感じています。」​ 

 

​​AIを活用したメンター制度も、TradeStationらしい取り組みの一つだ。AIがメンターとメンティー(サポートを受ける側)をマッチングすることで、新しく入社した社員がより早く組織に馴染み、自分の居場所を見つけられるよう支援している。​ 

 

​​「新しく入社した社員にとって、気軽に相談できる相手がいることはとても大切です。メンターがいることで、会社に馴染みやすくなり、自分の居場所も見つけやすくなります。」​ 

 

​​さらにHappy HourやOffice Day、Holiday Partyなど、社員同士が顔を合わせる機会を意識的に作っていることも特徴だ。​ 

 

​​「一度Zoomで話しただけでは、関係はなかなか深まりません。だからこそ、いろいろな方法で人と人がつながる機会をつくっています。」​ 

 

​​Jessicaにとって、これらすべての取り組みは、一つの目的につながっている。社員が互いにつながりを感じられる組織をつくること。人と人とのつながりが信頼を育み、その信頼が、組織の成長を支えていくと信じている。​ 

​​​​​​違いを尊重し、育まれる信頼がグループ共通の土壌に​

​​TradeStationのカルチャーを尋ねると、同社が大切にする“​Fundamentals​”の話に移った。かつて26項目あった行動指針を12項目に整理し直し、内容を絞りながらも、その精神は変えていないという。​ 

 

​​「文化とは、日々の行動の積み重ねでつくられるものです。健全な意見の違いはむしろ必要ですし、様々な視点があることで、組織はもっと強くなれると思います。」​ 

 

​​この言葉は、マネックスグループが大切にしてきた価値観とも重なる。挑戦を恐れず、互いの違いを尊重し、信頼を基盤に組織を育てていく。TradeStationで実践されているカルチャーには、そうしたグループ共通の思想が自然に息づいている。​ 

 

​​また、マネックスグループ全体について問うと、サステナビリティやDEI(多彩力/Inclusive Talent Culture)への姿勢が一貫していることに安心感があると話した。​ 

 

​​「世の中では昨今、サステナビリティやDEI(多彩力/Inclusive Talent Culture)の取り組みを見直す企業もあります。でも、グループとして大切にしている価値観が変わらないことは、社員にとって本当に心強いことです。」​ 

 

​​さらに今後については、グループ各社がもっと学び合う余地があると語る。​ 

 

​​「グループには非常に優秀なリーダーがたくさんいると感じています。もっと時間をかけて、お互いに学び合い、協力し合えたら、きっともっと価値が創出できるのではないかと信じています。」​ 

 

​​個社の強みを尊重しながら、グループとしての連携を深める。その姿勢は、マネックスグループが目指すシナジーのあり方を示していた。​ 

​​未来は、人を大切にすることでつくられる​

​​最後に、TradeStationで働き続ける理由を尋ねると笑いながら答えた。​ 

 

​​「私は、ここで働く人たちが好きなんです。」​ 

 

​​続けて、こう言葉を重ねる。​ 

​​「もちろん待遇も大切です。でも、それ以上に、人を大切にする文化があります。社員を思いやり、困っている人がいれば自然と手を差し伸べる。そんな空気がこの会社にはあります。リーダーは社員が安心して働ける環境をつくる存在として、柔軟な働き方やワークライフバランスの尊重、そして一人ひとりを気にかける必要があります。一人ひとりの積み重ねが、良い文化をつくっていくのだと思います。」​ 

 

​​文化は、決して制度だけでは作れない。日々の対話、信頼、学び合いの積み重ねが、組織の空気をつくり、未来を形づくっていく。​ 

​​社員が「この会社は自分を大切にしてくれている」と感じられることが、人を惹きつけ、組織を育て、企業の価値創造につながっていく――Jessicaの言葉からは、そんな信念が伝わってきた。

変化の激しい時代だからこそ、人を中心に据えること。その原点を忘れない組織こそが、これからも新たな価値を生み出していくと、私たちマネックスグループは信じ、これからも活動していきます。​

​​2026年7月​