私たちマネックスグループは、常に高い目標を掲げて成長を追求してきました。個人に最良の金融サービスを提供する真の金融インフラを構築するという大きな目標を掲げて創業し、今もなおその目標達成のために日々研鑽を積み、邁進しています。社史を振り返ると、私たちはオンライン・サービスと新しい手数料体系で既存の証券会社の牙城に食い込むことができました。お客様の大切な資産を預かる以上、情報開示とガバナンスを徹底する会社になるために早期に上場しました。金融市場がグローバルである以上、グローバルな金融サービスを提供すべきという思いでアメリカ、中国・香港、豪州、ヨーロッパなどで事業を営む海外企業をグループに迎えました。このように、大きな目標に向けて前進してきました。そして、2011年に掲げたグローバル・ビジョンもまた大きな目標に向けての取り組みであり、大きな進展がありましたので以下にご報告します。

グローバル・ビジョンは「グローバル化」と「システムの内製化」という二つのテーマで推進してまいりました。「グローバル化」とはまずは商圏のグローバル化です。具体的には、日米中を中心にお客様を拡大し、取引市場へのアクセスをグローバルに拡げることです。また、同時に私たちの役員・社員がグローバル化することを意味しています。マネックスグループの一人一人が世界中の知識・経験・人脈を自国での事業に活かすことができ、または事業アイデアをグローバルに展開することができることを意味します。このような「グローバル化」を支えるのが、「システムの内製化」です。つまり、自前のシステムを持つことで証券取引システムに関する技術力を強みにすることができ、例えば海外企業にシステムを提供し運用するような事業展開が可能になることを意味しています。

そのグローバル・ビジョンに今期は二つの大きな進展があります。一つは日本におけるアクティブトレーダー向けのツールのローンチが3月29日に実現したことにより、「アクティブトレーダー・ビジネス」が立ち上がることです。これは、米国子会社トレードステーションの技術を活用し、グローバルな開発プロジェクトが生んだ成果であり、正にグローバル化というテーマが目指していたことの一つです。もう一つの進展は、5年かけて進めている日本における基幹システムの内製化プロジェクトが今期中に完了することです。これらの大型開発プロジェクトの完了に伴い、今後は機能の追加や改善に優先的に取り組むことができ、お客様の声を採り入れたサービス開発を迅速に進められます。

このような、二つの大きなプロジェクトが節目を迎えるにあたり、グローバル・ビジョンは第一ステージをクリアし、次のステージに入るべき段階に来ました。第一ステージとは「投資と拡大」を追求するステージであり、次のステージとは「効率と効果(Efficiency and Effectiveness)」を追求するステージです。成長とは、リニアに一直線に実現されるものではなく、螺旋状に起こると言います。拡大しては引き締め、また拡大しては引き締めることを繰り返すことで成長を実現していくということです。そのような成長のプロセスを私たちも歩んでいます。

マネックス創業から17年、香港BOOM証券を買収し 、米トレードステーションを買収、そしてグローバル・ビジョンを掲げてから5年、マネックスは今、新しいステージに突入します。新ステージに合わせて、経営体制も進化させました。マネックスは今、屈伸したあとに、高く跳ぼうとしています。

それでは具体的に、私たちが事業を営んでいる各地域の今後の効率と効果の追求のための取り組みについて報告いたします。

日本セグメント:
前述の通り、アクティブトレーダー向けのツールが完成したことで、いよいよアクティブトレーダー・ビジネスが立ち上がります。今後は営業体制及びマーケティングをアクティブトレーダー向けにブラッシュアップすることで、訴求効果を上げることに努めます。もちろんツール自体の絶え間ない改善を続け、より質の高い取引プラットフォームの提供に努めていきます。同時に、米国バンガード社との共同事業などを通じ、従来からの投資家層に対しても、更に充実したサービスを提供してまいります。既存の基幹システムに関しては、内製化が完了した後には、例えばシステムの一部アウトソースや社外ツールの活用などにより、運営の効率化を図ります。社外のリソースを活用するためにも、一旦は自前でシステムを完全に理解しコントロールできる状態にすることが重要であり、今期中にはそれが達成されます。

米国セグメント:
トレードステーショングループを中心とした米国セグメントは、2016年3月期の第二、第三四半期に黒字を達成し、第四四半期は一時的な費用により赤字であったものの、全体的には黒字体質となりました。そして、トレードステーションの取引ツールは米国の金融情報誌「バロンズ」のオンライン証券ランキングの「アクティブトレーダー」部門において6年連続で最高評価を受けております。その強みを活かして、今後は更にデリバティブ取引を強化し、世界各地でその優れた証券取引プラットフォーム技術をライセンシングするB to Bの事業を推進していきます。前期、米国内リテールFXビジネスモデルを見直し、リスクとコストを下げつつ収益を追求するようにモデル変換しましたが、このようにオペレーションの効率化にも努め事業の収益性の強化を図ります。

中国・香港セグメント:
中国では、中国のリテールのお客様にサービスを提供する様々なビジネスが立ち上がっています。具体的には、トレードステーションのツールを国信証券にライセンスする事業及び、中国国内の証券会社と合弁会社をつくり、その証券会社にオンライン証券サービスをパッケージで提供する事業が始まっています。今後は更に、中国国内の証券会社との協業事業機会を追求し、私たちの資産と経験の事業化を図ってまいります。また香港では子会社のBOOM証券グループを通じて香港での顧客基盤を拡大すると同時に、BOOMが持つトレーディングプラットフォームを活かしたアジア圏でのB to B事業の拡大を企図します。

これまでの「投資と拡大」のステージでは、多少の遅れや見直しなどがあったものの、主要プロジェクトの完了まで漕ぎ着けることができました。今後は、「効率と効果」を追求し大きくなった事業を筋肉質にすることで、マネックスグループが更に強く、更に収益力の高い会社になり、全てのステークホルダーの皆さまへのリターンの向上が果たされるよう努めてまいりますので、今後ともマネックスグループへのご支援を何卒よろしくお願いいたします。