当グループが経営戦略としてグローバル・ビジョンを掲げてから2年が経ちました。この間、世界の主要国ではリーダーシップ交代をかけた選挙などが行われ、そのほとんどの国でリーダーが交代し、あるいはSNSにより世界各地で草の根的な市民革命が起こり、あるいは欧州危機が起こる一方で世界的な金融緩和が行われるなど、世界中でまさにさまざまなことが起こりました。このような流れの中で、世界が有機的に繋がり、世界各地の市民が自分の周りだけの事情に明るければいい時代はさらに後退したように見受けられます。資産運用の世界でも同じことが起きており、世界中の市場の情報を知り、世界中の市場にアクセスし、世界中の金融市場の株式・債券・ファンドを、そして多くの国の間の交換為替レートを売買する興味と需要が個人投資家の間でもますます大きくなっています。このような環境認識を踏まえて策定したマネックスグループの中長期戦略「グローバル・ビジョン」は、世界の主要国の証券会社をグループ化し、システムや情報を内製化し、グローバルな顧客基盤にグローバルな情報・商品・サービスを提供しようとするものであり、まさに時代の的を射たものであるとの確信を持っています。

 

グローバル・ビジョンを実行する中で、2012年11月、私たちは日本の子会社であるマネックス証券の顧客向けに、米国子会社・トレードステーショングループとマネックス証券が共同開発したシステムおよびサービスをリリースするという大きなマイルストーンを迎えました。このサービスは米国市場に上場する株式の大部分をリアルタイムで売買できるもので、プレマーケットおよびポストマーケットにも対応し、これを圧倒的な低手数料で提供する、日本随一の、いやアジア随一の、極めて完成度の高い米国株式売買サービスです。今まで米国の金融機関がなし得なかった、日本の個人顧客向けの株式売買システムの開発とサービスの提供に当グループが成功したことは、グループ内においてグローバル・ビジョンの実行と実現に対する自信を飛躍的に深めました。

トレードステーションとマネックス証券が共同開発した新・米国株サービスのインターフェース

この度、かつてどの金融機関もなし得なかったサービスの構築が実現し、この大きなステップを超えたことを機に、当グループの多年度計画の一部を、株主を含めたステークホルダーの皆さまに公表することとしました。この多年度計画は社内で「ロードマップ」と呼んでおり、グローバルな連携によるシステムおよびサービス開発、ならびに収益サイドとコストサイド双方についての計画で、当グループのグローバルの全従業員が共有しているものです。ロードマップを公表することを決めたのは、日本における米国株式売買システム・サービスのグループ内開発の成功により、対外公表に耐え得る確度になったと評価したからです。

 

グローバル・ビジョンは、2011年6月に買収した米国のオンライン証券グループであるトレードステーショングループの技術を活用し、日本の顧客向けのオンライン証券システム全般のグローバル化、内製化を進めることを中核とした戦略です。さらには世界各地の個人を中心とした投資家に、グローバルな金融商品とサービスを取引できるシステムと市場情報を内製化したグローバル・プラットフォームを提供していくことを可能にするものです。グローバル・ビジョンは、オンライン証券ビジネスの競争力の根源であるシステムを内製し、安定化するとともに、他社との差別要因とし、さらにはコストを低くコントロールすることを可能にします。システム、サービスおよび情報の内製化は、そのグローバル・プラットフォームを、B to Bという形で世界各地のビジネス・パートナーに二次提供することも可能にし、それは市場環境に左右されやすいオンライン証券ビジネスの収益の安定化にも寄与することとなるでしょう。

 

現在、当グループは、収益の約3分の2を日本が、約3分の1を米国その他地域が占める一方、社員の約3分の2はアメリカにおり、グループ全社員の約4割がエンジニアという、日本発の金融グループとしてはとてもユニークな構成になっています。収益および利益のメイン・エンジンである日本は、昨年12月の衆議院総選挙・政権交代以来、株式市場が歴史的な回復を果たしており、為替も含めた金融市場全般が大きく活性化しています。その中で個人のリスク許容度は大きく上昇し、当社の日本におけるビジネスには大きな追い風が吹いています。2013年は日本における経営環境は概ね良好な状態が続くものと予想しています。一方アメリカにおいては株式市場の株価は上昇するものの、投資家のリスク許容度は引き続き低く、投資家のアクティビティは株式・為替ともに低迷が続いています。しかしながら各種経済指標の回復は着実で、早晩投資家のリスク許容度は上昇し、経営環境も回復する可能性が高いと考えています。当社はそのような中で、短期的なコストカットを継続的に断行するとともに、中長期的なシステム・サービス開発計画であるロードマップを推し進め、またグローバル・ビジョンを実行する層の厚いエンジニア陣がアメリカや香港の既存システムおよびサービスの改善にも不断の努力を投入しています。グローバルなシステムおよびサービスの先進化・品質向上は、世界的なB to B展開を進める上でも重要であり、グローバル・ビジョンはビジネスの地域分散とも相まって、攻めと守り、競争力の確保とコストカットなどを兼ね備えた経営戦略であると認識しています。

 

日本・アメリカ以外の地域に関しては、中国・香港においては、中国の資本市場に関するさまざまなルールが前進していく中で、中国の個人向けのインターネットを通じた金融商品売買サービスを展開する追究を止めていません。またイギリス法人を中心に、世界各地の個人投資家の獲得とB to B展開を追究しています。

 

ロードマップの詳しい内容、世界の各拠点でのシステム開発と収益獲得のための施策、ならびにコストカットの具体的な金額を記した多年度計画は、2013年1月29日に発表した2013年3月期第3四半期会社説明会資料に記載しておりますのでご参照下さい。2013年は、私たちのグローバル・ビジョンが、ステークホルダーの皆さまの目に見える形で具現化していく年であると考えています。

 

MONEYのYの一歩先を行くMONEX。
私たちの金融ビジネスの革命はまだ始まったばかりですが、大きな成果と確固たる自信を既に兼ねています。これからのマネックスグループの躍進に是非ご期待下さい。

グループの概要