私たちマネックスグループが、2011年当時米国で上場していた、米第6位のオンライン証券グループTradeStation Group, Inc.を買収し、中長期戦略としてグローバル・ビジョンを掲げてから4年が経ちました。この間に私たちを取り巻く環境は、市場的にも、政治的・経済的にも大きく変わりましたが、一番大きく変わったのは私たち自身であると思っています。グローバル・ビジョンという一種夢のようなビジョンを夢見るだけでなく、その実現に向けて全世界の社員が日々のハードワークを重ね、失敗もし、引っ掻き合いながら、遂にその実現が実際に近付いて来ているのです。ここでグローバル・ビジョンとは、私たちの商圏のグローバル化、即ち世界中にお客様の層を拡げることと、アクセスのグローバル化、即ち私たちが提供する金融商品・情報を世界中のマーケットに拡げることと、人員のグローバル化、即ち私たちの役員・社員をグローバル化して互いの刺激を高め経営やアイデアを世界水準にしていくこと、これら3つの同時実現を指しています。このグローバル・ビジョンを実現する上でひとつ大切なことが、証券ビジネスを司るシステムの内製化とグローバル化です。何故なら現代の証券ビジネスにおいて、情報システムはそのあらゆる側面でもっとも重要な核だからです。

 

グローバル・ビジョンを進める中で、今4つの重要な柱があります。

 

1.米国子会社トレードステーショングループの最先端技術により、日本子会社マネックス証券がアクティブトレーダーを競合相手から奪取するための戦略ツールを開発・提供すること。このいわばトレードステーション・ジャパン・プロジェクトは、マネックス証券における米国株取引ツールの開発・提供、マネックス証券のすべてのお客様が利用する市場情報システムの開発・提供に続いて、ようやくその完成が近付き、今秋に稼働が予定されているものです。マネックス証券は長期投資家層から強い支持を受けてきましたが、貯蓄から投資への流れの中で引き続きその得意分野である投資家層向けビジネスを推し進めるだけでなく、アクティブトレーダー層というマネックス証券にとっては未開の成長スペースを切り拓いていくための極めて重要な戦略ツールと位置付けており、大きな収益増を見込んでいます。

 

2.日本子会社マネックス証券における基幹システムの内製化。これはオンライン証券ビジネスの生命線である基幹システムを内製化することで、事業リスクをコントロールし、かつ固定費の大幅な低減を図るとともに、機動的にシステムを変更・改善する力を持つことにより競争力の増強を図るものです。このプロジェクトはグローバル・ビジョンの始動前から取り組んでいるもので、既にマネックス証券の一部サービスはこの内製化された基幹システムで動いています。この新基幹システムへの全面移行は、来年の秋を計画しています。

 

3.米国セグメントの黒字化。米国子会社トレードステーショングループは、4年前の買収時には黒字の会社でした。残念ながらその後、市場ボラティリティと金利の大幅な低下による収益の減少、買収に伴うプレミアムの償却負担などから、赤字に転落しました。この米国セグメントの赤字が、当社の株価評価に大きなマイナス影響を及ぼしていると分析しています。そこで様々な面でのコストカットや、金融収支の改善、デリバティブ取引やB2Bビジネスなどを推進することにより、PLの改善に努め、今期中に米国セグメントを黒字化することを計画しています。

 

4.中国本土における個人向け証券ビジネスへの参入。中国は日本や欧米とはその制度が大きく異なり、また昨今の状況を見ても明らかな通り、大きなブレやリスクを抱えている国です。然しながらその株式市場・資本市場の成長は無視することは出来ず、個人投資家マーケットの成長はまさに驚異的です。本年3月には個人の新規証券口座は月間で100万口座以上増え、5月にはその数字は1000万を超えたといわれています。当社グループの将来の成長を考えた時に、この中国での個人向け証券ビジネスへの参入はとても重要な戦略です。当社においては2つの具体的な成果があり、進行しています。ひとつはトレードステーショングループのトレーディングツールのライセンスを、ブローカレッジ収益で中国国内第5位の大手証券会社である国信証券に供与するもので、本年春から実行されています。もうひとつは中国国内の証券会社にオンライン証券サービスをパッケージで提供する技術支援会社を、本年初めに杭州に設立し、実際にその事業を始めていることです。技術支援先の証券会社では、既に数万単位のオンライン証券顧客を新規に獲得しており、いずれこの事業は大きく成長し、当社グループの収益・利益にも貢献してくることを見込んでいます。当社が知る限り、中国本土で、個人向けの証券ビジネスに間接的であれ参入を果たしている非中国の会社は、現時点では当社以外にほとんどないと思われます。

 

これら4つのイニシアティブ。米国の大手オンライン証券の最先端技術を活用した日本のアクティブトレーダー・スペースへの参入。日本における基幹システムの内製化。米国セグメントの黒字化。大きな成長を見込む中国本土の個人向け証券ビジネスへの参入。私たちはこれらのことに5年以上前から取り組みはじめ、この4年間はグローバル・ビジョンの旗の下に、その実現に向けて邁進してまいりました。その努力が今、まさに実りつつあります。そしてそれは、顧客へのサービスの向上、利益の増大、株価の再評価などを通した株主の皆さまへのリターンの向上に繋がってまいります。

今後は更に人材のグローバル化も進め、真のグローバル・ビジョンの追究・実現に努め、全てのステークホルダーの皆さまへの様々なリターンの向上に努めてまいりますので、今後ともマネックスグループへのご支援を何卒よろしくお願いいたします。

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